藤野 眞功『犠牲にあらず』

犠牲(いけにえ)にあらず

犠牲(いけにえ)にあらず

初めて読む著者(まだ作家ってわけじゃない?)の作品でしたが、視点の切り替えがムチャクチャすぎて読み難いのなんのって。
猟奇性とか異常性とか少年犯罪とか、そういう“特異な点”は何一つないなんてことのない事件の加害者(家族)と被害者(家族)の立場をマスコミと大衆がいとも簡単に逆転させて(させられて)しまう社会を描くというところまではよくある話なんだけど、この作品はその先、当事者(事件関係者)がそういう社会に対して動くところまで描いていて展開としてはとても面白いと思うものの、それを“読ませる”ところまでは到底届いていない。その主な理由は前述の「視点の切り替えの下手さ」だと思う。群像劇でもないのに多視点すぎる。そのくせ各人物の掘り下げがなされてるとは言い難いので各視点がとにかく軽い。各人物やそれぞれに付随する背景(設定)はこの物語に関わる上で必要なものだとしても、それを説明するために“視点”としちゃうのはあまりも手法として安易ではないだろうか。