吉田 修一『怒り』

怒り(上)

怒り(上)

怒り(下)

怒り(下)

夫婦斬殺犯が整形して逃亡する様を描いた作品のつもりで読み始めたらホモ小説でびっくりしました。
いや別にそれがメインというわけではなく、多視点で並行して描かれる各物語の中にそれぞれ“それらしき男”が登場するという構成で、その中で視点となる一人が同性愛者だということなんだけど、そのパートが読み応えありすぎてですね、コンビニから出てきた男を視点となる男が観察するシーンとか素晴らしすぎてですね、このパート読みたさで思わず3駅乗り過ごしました(笑)。集中しすぎです(笑)。
で、最後まで読んで、3つの物語がどう事件と関わっているのか、関わっていたのかが明らかになって、それぞれ絶望だったり希望だったりいろんな感情、いろんな人生があって、それはこれからも続いていくのでしょうが、やっぱり最後までホモパートが素晴らしすぎて、切なすぎて、心が震えた。他の2視点もしっかり読ませてくれるし、一つの事件が視点人物のみならず関わりを持つ周囲の人間にこんなにも影響を及ぼしてしまうんだなーって、でも多分人生ってそういうもので、巡りあわせじゃないけど自分じゃどうにもならない(どうしようもない)ところから何かが飛んできて、それによって捻じ曲げられてしまったり奪われてしまったり変えられてしまったりするんだろうなーって、そういう・・・理不尽?不合理?適切な言葉が見つからないんだけど、そんなことを考えながら読んでいたはずなんだけど、でも心に残るのはホモなのである。