海堂 尊『ナイチンゲールの沈黙』

ナイチンゲールの沈黙

ナイチンゲールの沈黙

バチスタ・スキャンダルから9ヶ月。ようやく落ち着きを取り戻した東城大学医学部付属病院の小児科病棟に勤務する浜田小夜は、眼球に発生する癌・網膜芽腫(レティノブラストーマ)患者の子供達を担当している。近いうちに眼球を摘出されてしまう子供達のメンタル面を心配する小夜は、上司の判断もあり、不定愁訴外来担当、通称グッチーこと田口にメンタルサポートを依頼。同時期に、同僚の翔子とともに偶然伝説の歌姫のステージを見る機会に恵まれたが、ある曲を聴いた小夜は錯乱し、そして歌姫は大量吐血。翔子の機転で勤務する病院に運びこまれ、当直していた田口が歌姫の担当医となる。そんな中、小夜が担当する少年の父親が殺されるという事件が発生。警察庁から派遣中の加納警視正は独自の調査を開始する。天涯孤独となった少年の取調べという異常事態に、加納は田口の元で聴取を希望。そして愚痴外来の主・田口の元へ、ロジカル・モンスター白鳥が帰ってきた。


うわー、それなりに期待してただけに、このガッカリ感は相当なものだわ・・・。前作が話題になり、私も結構楽しめた理由は“医療ミステリ風”エンターテイメントだったからだと思うのです。ポイントは医療とミステリ風ってとこ。どっちも土台の部分がしっかりしてる上に両者が結びつく説得力があって、なおかつエンターテイメント性もあったから面白かったのだと思う。それなのに今回は、起こった事件と医療は直接結びつかない。単に病院に勤務する人物と患者が起こした事件というだけで、そこに白鳥が絡むのは無理やりすぎじゃないだろうか。トリックはトリックとは言えないレベルだし、おまけに神秘的な歌姫まで登場させちゃって、前作も決してリアリティがあるというわけではなかったけど、今回は完全にファンタジーの世界ですからね。現役医師が書いてるものだしああいうことってあるのかもしれないけど、妙に飾ってるからうそ臭く思える。同時に読んだ螺鈿迷宮でも感じたんだけど、バチスタの文章はもっと簡潔だった気がするんだよな(会話パート除く)。ていうか無理してアリバイとか出さなくていいのに・・・。相変わらず田口と白鳥のやりとりは面白いし、医師たちも思いっきり分かりやすくデフォルメされてるからとっつきやすいし、そこらへんは上手いと思うので、ミステリはスパイス程度の医療エンタメ小説で全然いいと思うんだけど。無理にミステリに拘らなくていいのに・・・。