劇団☆新感線 INOUEKABUKI SHOCHIKU-MIX『朧の森に住む鬼』@新橋演舞場

1階席前方花横と1階席後方センターと2階席最前列センターと、役者好きかつ新感線好きとしてはこの上ない環境で3回観劇いたしました。もっと見たいんだけど、お金がなーい!



染がとことん悪い男の役を演じることで話題の舞台ですが、ワル染ももちろんとんでもなく素敵なんだけど、サダヲ演じるキンタが持ってったなーという印象。役がものすごく良くて、ただひたすらに染演じるアニキのライを慕い続ける腕っ節は強いけどバカな男で、前半はとことん可愛く、後半は哀しくて切なくてでも強い。思いっきりアテ書きだと思うんだけど、飛んで跳ねて斬って唄って踊って笑って泣いて寝て・・・サダヲの魅力全開。ほんと可愛かったわー。サダヲにアホな子やらせたらほんと間違いないよなー。キンタが唄って踊る(バックダンサー・サンボさん&磯野さん)のは1曲だけなんだけど、それが客席登場でして、あたしが一番初めに見た時後方センター席で、いきなりピンスポが当たって真横にキンタがいたから本気でびっくらこいた。ぜんっぜん気配感じなかったんだもの・・・。

相変わらず新感線の染は本当に素敵。歌舞伎の染五郎では唯一好きなのが(いやむしろ大好きなのが)「女殺油地獄」で演じた与兵衛なんですが、それを彷彿とさせるような狂気だった。しかも今回は柔らかな生地を使った衣装をお召しになってることが多くて、立ち居振る舞いの美しさが際立ってました。今回は舞台装置がおとなしめ(あくまでも新感線としては)のせいか、衣装が色彩に富んでてきらびやかで、眉毛のない麿(まろ)風衣装の着こなしが様になることといったら・・・。あの着こなしっぷりはさすが歌舞伎役者、さすが踊りのお師匠様だわ。そして心の中でうっひゃぁーーーーーーーーーーーーー!と叫んでしまったのがぼろぼろのこ汚い浪人?姿から最初に着替えた上が水色で下が紫の、大陸系袴姿というか映画グリーン・デスティニーの世界っぽいひらひらお衣装姿でございました。ものっそい色っぺぇぇぇぇぇ!花横で見た時目が合った(←俺イタタ・・・)気がしたんだけど、マジでズキュン!って感じだったもの(←俺イタタタタ・・・)。あの瞬間はかんっぺきに目がハートになってたと思う。しかもそのお衣装で聖子さんとベッドシーンがあるわけですよ!!!あざーーーーっす!歌舞伎で見ても染に色気を感じたことなんて一度もないのに、新感染だととんでもなく色気を感じるこの不思議。ていうかそめそめ痩せた?腕細っ!って驚いた。
前半の王の座まで駆け上がるライの時、声がかすれ気味だったのが気になった(これがまた色っぽいんだけど)のですが、後半の王になったライの声は張りのある声で、なるほど、声の出し方もちゃんと変えてるんだなとつくづく感心。3度見ただけですが、初回観劇時よりも2度目、2度目よりも3度目の方が確実にライが悪く、そして憎らしくなってたのには心から感服いたしました。やっぱ染ってスゴイんだよなー。なんで歌舞伎の時は・・・(お約束)。殺陣も今回はオール殺陣!と言ってもいいぐらい殺陣だらけなのですが、身体のキレがどんどん良くなってて、ほんと凄い。凄いとしか言えない。サダヲの運動能力も凄いんだけど、染は運動能力に加えて魅せる動きをしてくれるんだよな。力強さだとかスピード感を感じる殺陣は他の人でも見ることはできるけど、プラス美しさを兼ね備えた殺陣をするのは染だけだと思う。

口先だけで生きる極悪非道の男・ライ。見る前はこう隙のない男というか、常に緻密な計算の元に嘘をつきまくる男なのかと思ってたのですが、むしろ行き当たりばったりというかかなりギリギリの綱渡りで生きてる男だな・・・と思った。それだけ機転が利くってことなんだけど、悪人であることは確かなんだけど、冷血ではなくて熱血な悪人・・・うーん上手い表現が浮かばなくてもどかしいんだけど、氷よりも炎を背負った悪人だなーと。それはそれで悪くないんだけど、とことん無表情で冷酷な悪い男の染を見てみたかったなってのもあるんだよな。まぁそうするとあの可愛いキンタはいなかったわけなんだけど。エイアン国の王を目指し、キンタと二人で企み助け合いながらのやりとりを見てるとなんだかライを思いっきり憎むことができないんだよな。道具ぐらいにしか思ってなかったキンタに対して無意識のうちに手加減をしてたライだけに(ここ、手加減すらもシュテンを追い詰めるための策略だとも考えられると思うし、ライの中でもそのつもりなんだと思うんだけど、でも無意識レベルではほんとに手加減しちゃったんじゃないかと思う)、最後の最後は自分がしてきた悪行を悔やんだりするのかな・・・なんて甘いことを考えたりしましたが、求め続けたツナに斬られ、落ち武者狩りに襲われ、雨に打たれ滝にうたれ、最後の最後まで世の中を恨み呪いながら果てる壮絶なラストはすごく良かった。最期まで悪を貫きとおし続ける強くて哀しい意志を感じた。一緒に観た友人が水をドバドバ使う演出を見てしきりにすげーすげー言いまくってましたが、去年同じ演舞場でタッキーの舞台をアホほど見たあたしとしては(舞台美術面では)まだまだ出来るだろう新感線!とあえていいたいと思います。

ライの愛するツナを演じた秋山菜津子さんは美しかった。そしてオトコマエだった。ツナがカッコよかったことは間違いないんだけど、夫を失くし、部下であり夫の仇である男から求愛されている女の色気が足りないかなぁという気がした。迫るライの方がよっぽど色っぽいんだもん。特に“夫とライが戦っている夢を見る。そして夫はライに殺される。私はあの男に抱かれたいと思っているのだろうか”と独白する場面はもうちょっと煩悶するように言ってもいいんじゃないなと思った。ライとツナのシーンにもうちょっとセクシャルな空気を入れてもいいんじゃないかなと。対極にいる聖子さん演じるシキブがどこまでも“女”であることにこだわっているので、意図してのことかなとも思うけど、もうちょっとドキドキしたかったなーという感じ。

真木よう子さんのシュテンは少年のようでした。ていうか顔ちっちゃ!!!秋山さんと比べると(比べんなってな話ですが)殺陣や立ち姿がぎこちないなと思いましたが、中性的な魅力でこれまたオトコマエでした。シュテンの部下が村木さんと逆木さんの小太りコンビ(ごめんなさい)に、スタイル抜群のエマさんとメタルさんというビジュアル的にとてもバランスのいい組み合わせでして、シュテンが頭領ではあるんだけど、みんなでシュテンを守ってるというか、チームという感じがしてカッコよかった。むしろ気分的にはエイアン国よりもオーエ国を応援してましたw。

粟根さんはいつものように“あの眼鏡”呼ばわりの日替わりネタ担当で、古ちんはどっしり構えて動きもセリフも少なめですが、地味に顔芸でワラかしてくれました。あと蛇の刺青のくだりめっさワロタ。マダレと一緒に俺もエェェェェェェエ!?!?でした。そして客演以外で今回一番素敵だったのが“夜のアラドウジ”wwwwwの川原さんでございました。ライの悪党っぷりの影でアラドウジもなかなかの小悪党っぷり。やっぱ川原さんって演技も上手いよなー。


酒呑童子とリチャード3世からヒントを得ているとは言え、これだけの物語を生み出す中島さんはやっぱすごいわと改めて思いました。シンプルで誰でも分かるストーリーかつ登場人物達にはそれぞれちゃんと抱える事情や想いがあって、それぞれに心を寄せるとそこにはまた別のストーリーがあるという。いのうえさんの演出も、いつもながら効果音と幕の使い方は超絶カッコよくってテンソン上がりまくるし、歌舞伎以外で新橋演舞場という空間(というか花道)をあそこまで効果的に使える人っていないと思う。そしてなによりも市川染五郎を素敵にみせることにかけては世界一。うぉー、大阪も行きてぇぇぇぇぇ!