海堂 尊『コロナ黙示録』

コロナ黙示録

コロナ黙示録

  • 作者:海堂 尊
  • 発売日: 2020/07/10
  • メディア: 単行本

冒頭から海堂さんの政治・官邸批判が炸裂で、事あるごとにその主張がダラダラと垂れ流されているもんだから辟易しましたが、バチスタシリーズだし、速水先生がんばってるし!と自分に言い聞かせてなんとか読み終えました。
武漢から始まって旅客船が培養船と化す流れは現実そのもので、速水がセンター長を務める北海道の病院で研修医が患者経由でコロナを発症し、さらにその研修医と速水も濃厚接触していて、一方東城大医学部付属病院では旅客船の軽症患者を受け入れることになり(その背後ではもちろん白鳥が動いてる)グッチーがコロナ対策本部長を務める羽目になる・・・と書くと現実とバチスタシリーズがうまいこと融合してるように聞こえるでしょうが、その時に問題視されていた桜を見る会騒動とか布マスク騒動なんかも織り込まれていて、むしろそっちのほうが「本命」で、速水や田口のパートが却って浮いてしまっていて、とにかくもう辛かった。

海堂さんは元々そういう傾向のある作家さんだし(私はそういう認識です)、コロナへの対策やそのどさくさで起きた数々の出来事に言いたいことがやまほどあるだろうことはわかります。そして作家であるわけだからそれを自作で書くのも当然といえばそうなのでしょう。でもその描写が悪意の塊だもんで、私にはそうとしか受け止められなかったもんで、それが私の好きなシリーズの世界で行われていることが、シリーズキャラクターたちの口から語られることが、ほんとうに辛かった。これは私の許容範囲を超えています。

そんな中で言い方悪いけどそれを補うかのように「藤原さんの退職」が描かれたことが哀しい。