湊 かなえ『ブロードキャスト』

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中学の陸上部で中距離として活動していた圭祐は憧れのチームメイトと同じ高校に進学し陸上を続けるつもりでいたが、卒業式を目前にして交通事故に遭いこれまでのように走ることができなくなった。目標を失った圭祐が入ったのは放送部。入部を誘ってくれた正也や仲間・先輩とともに作品作りに携わるうちに、圭祐はその面白さに目覚めていく。
・・・という物語なのですが、このあらすじを読んでこれが湊かなえ作品だと思うひとは皆無でしょう。読みながら何度も「これ湊かなえだよな?」と思いましたもん。女子の間ではチラチラと「湊かなえ感」が顔を出すものの、特にコレといった関係だったり感情だったりエピソードだったりがあるわけではない至って普通の青春小説で、これを書いたのが湊かなえだということ自体が最大であり唯一の驚きというか特筆すべきことで、ただそれだけでした。
繰り返すけど湊作品比で言えばずいぶんとマイルドではあるものの女子の描写はサラッと酷いものがちょいちょいある一方で、かつてのチームメイトに対する黒いモヤモヤを抱えているとはいえ主人公はまっすぐで、まっすぐに屈折していて、心残りである駅伝の大会に纏わる諸々もチームメイトとの関係もすっきりさっぱり解決しちゃって、だからこそ女子の面倒臭さが印象に残る、という意味ではやっぱり湊かなえらしいと言えるかな。