『リバース』第6話

愛媛の友人たちからみたら深瀬たちは“夜の雪道を免許取り立ての由樹を一人で迎えに行かせた”奴らであって、その結果残ったのは由樹が死んだという事実だけであるわけだから、由樹を殺したのはお前らだと責める気持ちはわからんでもないけど、そこで「人殺し」って言葉を使うかなーと。
飲酒運転の事実が知られているならともかくそうじゃないわけで、その背景として“争いを好まなかった”“だから頼まれたら嫌と言えない(言わない)”という広沢の性格があって、地元の友達らはそれをよく知ってるから恐らく“東京モンが半ば無理やり由樹に迎えを押しつけた”ってところがあるのでしょうが(深瀬や浅見はともかく葬式や三回忌に来た谷原と村井はまさしく“東京モン”の態度・言動を見せてただろうと想像できるし)、それにしたってもう何年も経ってるというのにこの責め方は田舎にありがちな閉塞感を東京モンにぶつけて鬱憤晴らししてるとしか思えん。たまたま飲み会の予定があるからそこに深瀬たちが混ぜてもらったってんじゃないんだもんね?。由樹の話を聞きたいって東京のやつが来たから集まったんだもんね?。何曜日の夜だかしらんけど罵るためにこんなに集まるとかそういうことでしょ。でもこれはまさしく湊かなえ作品に流れる空気感。
そしてクソ友人たちがボロクソにけなす広沢にくっついてた古川なる男の評価が自己評価とどん被りで居た堪れなくなる深瀬ってのはソレとして、広沢が自分だけでなく昔から“そういうヤツ”と親友関係を築いていたこと。ここにそこはかとなく悪意を感じとれなくもない、とれてしまう、それが湊かなえ作品なのだ。
とか思いつつ、古川と深瀬の見るからにあまりにもドン臭い逃走&追走劇は笑った(笑)。ここ1つとっても藤原竜也の演技力ってすごい。
あ、あと笑ったと言えば他人は許せることでも許せない性格だからついキツくあたって人間関係壊しちゃう、深瀬くんにも厭な思いさせたよねという美穂子に「大丈夫、俺ドMなんで!」(直訳w)とか言っちゃう深瀬な(笑)。
決して美穂子を励まそうとしてとか、そういうつもりのドMだから大丈夫じゃないんだよね。ほんとうに「俺は気にしてない」と伝えたくてのドM発言であること。ここに深瀬のどこまでも鈍感さがよく表れてるんだけど、そんな深瀬と浅見は広沢の地元で一方的な悪意をぶつけられ、そこで浅見は実は谷原に言われて飲酒の証拠を隠滅すべく血のついた雪を谷底へ捨てたんだと更なる“秘密”を明かして深瀬に「お前は何もやってないんだから気にするな」ってなことを言ったし、止めなかった自分も同罪とか言いつつも深瀬の中にそういう気持ちはあると思うのね。酒を強引に飲ませた谷原や自分だって免許持ってるのに就職先が決まってないからと運転を押しつけた浅見、そして迎えに来いと言い張った村井と比べたら“自分の罪”はそこまで重くはないと、そう思ってるところがあるはず。加えて三人は広沢の友達だったかもしれないけど自分は親友だったと、だから俺は三人とは違うんだと、それを自分に対する免罪符として生きてきたところがあるんじゃないかと。
その瞬間が訪れるのはまだもうちょっと先になりそうだけど、その時藤原竜也がどんな顔をするのか。その瞬間に向けてひとつひとつ階段を登る深瀬和久という男を演じる藤原竜也を見ているだけでわたしは興奮する。