『真田丸』第46回「砲弾」

なんかいろいろと遣る瀬無い回であった。
まずは秀頼様。
周りの人間が何を言おうが母親に何を言われようが、最終的に断を下すのは大坂城の城主であり大坂方の大将である秀頼自身だと、秀頼が一番欲しかったであろう言葉をくれたその当人から『自分が下した断』をひっくり返された。それもただひっくり返されただけでなく『母親の一言』という一番・・・・・・されたくないであろう方法で。
「断を下すべきはもちろん殿でございます。しかし、その断が誤りであれば私はいかなる手を使ってでも食い止めまする。私は、戦に勝つためにここに参ったのでござる」
確かにそれはそうというか、幸村の言い分としてはまぁそうなんだろうなと、そうは思うんだけど、秀頼公が追いかけてきてまで「なぜだ」と問うたのは『信じてたのになんで裏切るようなことをするんだ』ってことなわけで、それに対する答えにはなってないというか、幸村の言動の中に『秀頼公のお気持ち』は全く斟酌されてないんだよね。わたしにはそう見える。
まぁ最初から『戦に勝つ』といいつつ勝った先のことは考えてない、何のために、誰のために『勝つ』つもりなのか、幸村の発言からはそれが見えないわけで、だから「豊臣」のためというよりも「自分のため」の戦をしてるってな感じだけれども、ていうか幸村にしてみりゃ懇切丁寧に今後の作戦を教えそれを理解してもらえたと思ってたのに結局和睦とかふざけんなってんで業を煮やしたってな話ではあるんだろうけど、秀吉の最期の頼みは「秀頼を頼む」だったし、茶々様の希望も「秀頼と自分と源次郎の三人でどこかで暮らしたい」だし、もっと言えば三成が清正に託したのも「秀頼様を守れ」だったことを思うとやっぱり秀頼様に対するこの発言、おかみ様をも“使う”様を見ると、なんとも遣る瀬無い気持ちになりまする・・・。
つーかこの“もうちょい相手の気持ちを慮れよ!!”な感じ、三成のソレとおんなじ・・・・・・・・・・・・・・・・。
続いて片桐さん。
史実的にもこのドラマにおける人物像的にも“そういう役回り”であることはわかってるんだけどさ、賤ヶ岳の七本槍としての・・・なんだろう・・・・・・矜持というか男気?を見せた、見せようとしてる平野さんに対し片桐さんの愚かさであり哀れさは・・・辛いわ。
でもこれ、見ようによっては片桐さんの言い訳・・・のように見えなくもないんだよなぁ。片桐さんもいい加減家康のやり口に気付いてると思うのよ。そもそも家康が狸であることをよく知ってるわけだし。だから自分にかける甘くて優しい言葉が自分から情報を引き出すための餌であることぐらい頭のどこかではわかってるんじゃないかな。でもそこで片桐さんはそれを“騙された(乗せられた)”ってな言い訳にしてるって側面もあるんじゃないかなーという気もする。自分が情報を伝えずともいずれそれは分かってしまうことだろうから、だったら自分の口から伝えようと、伝えるべきだという思いがあったとして、そこにそれこそが自分が背負うべき咎だという思いと、あともしかしたら自分を追いだした淀殿や大蔵卿への復讐心も、その欠片ぐらいは無きにしも非ず、かもしれないなーなんて思ったり。
そして最後はお兄ちゃん。
父上や源次郎は散々無茶をしてきたじゃないか!わしとて一度くらいは無謀な賭けをしてみたい!ってなお兄ちゃんの想いにグッときたのに、体中ベトベトにされるという扱いに泣けたわ・・・。
これまで何かと言えば「家康殺るか?」だった出浦さんなので、稲の導きでお兄ちゃんの前に現れた出浦さんは「お主には無理だ。儂が行く」と言うのではないかとほんの一瞬期待しちゃったんだけど、“あの”出浦さんをもってしても徳川に逆らうとかバカな真似はよせと、真田を潰すつもりかと、そう言うしかないのが現実・・・ということなんだろうなと。まぁ“お前の父は無茶をしてきたようで常に先を読み策を当て、真田の家を残してきたのだ”ってな発言は随分な思い出補正入ってんなあオイ(笑)としか思えなかったけどw、確かに昌幸が無謀としか思えない賭けに出たのは常に真田が生き残るためだったのに対し信之が「一度くらいは無茶してみたい」という大坂城への兵糧送りってのはリスクに対するリターンがあるとすれば「信之の自己満足」ぐらいしかないわけで、それは博打にすらなってない・・・・・・わけで、それなのにそれを一世一代の大博打のように言っちゃうお兄ちゃんはこれまでどれだけ耐えて堪えてきたんだろうなぁ・・・って、ていうかたぶんお兄ちゃんもそこいらへん分かってる面はあるんだろうけど、それでも博打をするなら“源次郎が生きてる『今』”、つまり源次郎に自分の博打を見せたい、わかってもらいたいってな思いもあったりするんじゃないかなーとまで考えてしまって、馬鹿だなーと思いながらも首元に刀突きつけられるお兄ちゃんを見ながらギュンってなったし、それでも出浦さんを振り切って大坂へ向かおうとするお兄ちゃんにはギュンギュンっ!!ってなったのに、次の瞬間なんだかわかんねーネバネバでドロドロになってるとかさぁ・・・・・・ほんとお兄ちゃんの扱いがクソすぎて泣きたくなった。
それはそうと出浦さん、そんなナイスなネバネバアイテム持ってるなら家康暗殺の時に使えばよかったのにー。
今回出浦さんとともに信尹叔父上も久々に登場なさったわけですが、なんだかわかんねーネバネバというしょーもないネタのせいで後味悪くなってしまった出浦さんに対し叔父上は文句ナシのカッコよさだった。
もう第一声から「読まんでいい」までカッコいい良い声すぎて身悶えせざるを得なかった。
正直言うとさ、幸村となった今の信繁に叔父上が言うほどの『義』があるとは思えないんだよね。だけど叔父上にとっては「我ら兄弟に似ず義に厚い男」なんだよ。ばば様の通夜から今日まで(このドラマの)叔父上がどんな人生を送ってきたのかわかりませんが、かつて信繁に「儂のようにはなるな」と言った叔父上にとって、信繁が豊臣への義を貫き大坂方で戦っているという事実は救いであり答え・・・のようなものなんじゃないかな。とか思うと「読まんでいい」がより一層素敵に聞こえるわ。だってもう家康に対し「(調略は)不首尾に終わりました」「御免」だなんて言える男がどれだけいるか!?ってな話よ!!。はー叔父上ほんと素敵。
そして素敵といえばそうです勝永さんです。勝永さん二刀流とかああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!。
つーか途中で逆手持ちに変えるとかこのひとどんだけカッコいいんですか!!!!!。
あとあと重成くんが初々しくピンチになってるところを助けに入るのが幸村でもなく又兵衛でもなく勝永さんでもなく塙団右衛門だったのがとてもよろしい。むさくるしいオッサンに助けられる美青年はとてもよいものです。
(つい先日某悪魔で執事ですから舞台で塙団右衛門を演じてらっしゃる小手伸也さんをはじめて生で拝見したのですが、この人上手いのな!!。塙団右衛門を見てなかったらたぶんわたしは役の再現度という観方しかできなかっただろうけど、塙団右衛門の人だということを知っていたので役だけでなく役者さんとしても観ることができてよかったなー)
そんな塙団右衛門の下で戦うためにここにいるんじゃねえ!ってなプライドをみせた長さんこと盛親もわたしのメモリにしっかり書きこまれたよ!!。
でさあ、この夜討ち相談って居酒屋・大坂城で行われてたからてっきり料理人の親父経由で徳川にバレるんだと思ってたんだけどそんなことはなく、一方で正信と有楽斎が通じてることが明らかになりましたが(幸村今ごろ佐助に有楽斎の動向を探らせてんのかよ。それぐらいもうとっくにやってるかと思ってたわ)、籠城してる大坂城で生の魚を手に入れることは難しいだろうし、やっぱりこの料理人も徳川と繋がってるよね。いずれ有楽斎が追放されるとして、それにより情報が洩れることはなくなったと安堵してたらやっぱり洩れてて、他にもいるのか!?→料理人の親父でしたー!ってな流れになるんだろうなぁ。この親父さんいいひとだと思ってたのに・・・。
そんでもっての砲撃。
大坂城にカルバリン砲が撃ち込まれるってのはこの作品の見せ場の1つになるだろうとは思ってましたが、まさかそれを砲弾目線で見せられるとは。
この映像にはなんていうか・・・本能的に恐怖を感じて、この時代に突如こんなもんが飛んできて今この瞬間までそこにいた人間が瓦礫の下敷きになって死ぬのを見たら、子供と自分の安寧だけが保たれればそれ以上は望まないというこのドラマの淀殿なら無論のこと、一般大衆がイメージする淀殿ですらさすがにビビって心折れるわなという説得力になってた。
てかこれ屋根に乗ってた黄金の鯱が落下してきたってところがポイントよね。あそこに砲弾ぶち込まれるよりも難攻不落の大坂城、決して落ちる(攻められる)ことはない大坂城の鯱が大砲に撃たれて目の前に落ちてきたほうが心理的ダメージでかそうだもん。