月村 了衛『機龍警察 火宅』

国際テロリストを相手に龍機兵で戦うような派手な事案ではない、長編の隙間を埋めるような云わば「特捜部の日常」を描いた短編集です。
「余命幾ばくもない尊敬する上司を見舞う由起谷の話」と「由起谷が警察官になろうと思った話」と、由起谷をぐいぐい掘り下げる2篇もあったりするので由起谷推しの私ガッツポーズ。
ていうか若かりし由起谷の方言クッソ萌える!!!!!!!!学ランですかブレザーですかっ!????どっちでもイケます!!!!!!!!!!(超まえのめりで)。
表題作で特捜に悪感情を抱いている刑事の言葉についつい昔の自分が出てしまった由起谷ってな場面があって、その刑事に由起谷が浮かべた一瞬の表情を見られてしまうんだけど、これ由起谷は車の後部座席にいるんですよね。話しかけてる刑事は助手席にいるから振りかえらないと由起谷の表情は見えないわけですが、運転してる刑事もあからさまな悪感情を向けこそしないものの言ってることはキツイわけで、直接描写こそないもののこっちもきっと由起谷の表情をしっかり確認したと思うんです。なにで確認したか?。もちろんルームミラーでですよ。
何が言いたいかというと、ルームミラーに由起谷の「白鬼」が映るカットを想像してピギャりました!!!ということ。
もちろん城木も負けてません。
国会答弁用の草案を一晩で仕上げろという厳しい仕事を与えられ(与えたのはもちろん沖津)、上着を脱いでシャツの袖をまくり汗みれで書類と格闘し『乱れた前髪が額に垂れ、さすがに普段よりやつれて見える』城木の図ってのもそうだし、何気ない描写(ワンカット)がとにかく絵になるのよね。なのでアニメ化まだですかっ!??(実写は断固認めません!!)。


誰だって人生を歩んでいるわけで、過去・現在問わずそれぞれがいろんなものを抱えているのだけど、やっぱり三人と捜査員たちのそれらは本当に全然「別物」なんですよね。これまでの長編でも描かれてきたけど、とにかく世界が違う。生きてきた環境過ごしてきた時間が違いすぎる。それでも今彼らは特捜部という一つの集団なんです。このシリーズの感想を書くときいつも同じようなことを書いている気がしますが、ひとりひとりの物語が現在に繋がっているんです。
でも、そんななかでも、やっぱり沖津のことは描かれない。事件の中で経験を語る際に昔のことがチラっと描かれてはいるものの、日本人でありながら傭兵として戦い続ける姿もそう。いつか必ず二人の話を読める日が来るのだろうと思うと楽しみで仕方がない。
・・・・・・んだけど、ついに追いついてしまった・・・。これでもう新刊を待つしかない状態になってしまった・・・。飢餓感に苦しむ日々が始まる・・・。