月村 了衛『機龍警察 白骨街道』

何年ぶり!?何年ぶりの機龍警察の新作なのよお!!。
と書店で実物を手にしたときに心のなかで叫んでしまいました。
で、何度も表紙を開きたい欲望に駆られつつも新年一発目に読むべく目に留まるところに飾って我慢の日々を過ごしていたわけですが(ドM具合には定評があります)、衆議院選挙の結果に絶望し、このままではわたしの精神が持たん!逃避だ!現実逃避だ!!というわけで、読み始めてしまいました。
ていうかこのくだり、前作の狼眼殺手でも同じことをやってました(4年ぶり2回目)。


そして読み終わってしまった。
読むんじゃなかった・・・・・・・・・。


今回は「秘密裡に開発が進められている国産機甲兵装の着脱式複合装甲モジュールのサンプルを国外に持ち出した男が国際手配の末ミャンマーで逮捕された。国産機甲兵装が開発されていることなど知らなかった沖津だが、男の身柄の引取役として突入班の三人を民族紛争真っ只中のミャンマー奥地へ派遣しろという官邸の「決定事項」を受け入れるしかなかった」という始まりで、姿とユーリとライザはミャンマーで文字通りの死闘を繰り広げる一方で沖津以下特捜部は事案の背後に城木の親族が経営する「城州グループ」が密接に関わっていることを突き止める。
難しい立場の城木に対し沖津は「休暇」を命じ、情報を探るべく城木は久しぶりに京都の分家を訪ねることとなるのですが、突入班と捜査班が完全に分断された状態で物語が展開されることに加え、捜査班の目的は国産機甲兵装開発に伴う金の流れを調べることなので合同で捜査にあたる捜二+仁礼財務捜査官の活躍が目立ち、夏川や由起谷、緑は“会議に出てるだけ”の印象なので「特捜部」の活躍という意味では物足りなさがあります。

でも「読むんじゃなかった」の理由はそれではない。

覚悟のうえで京都に向かった城木が直面することになった現実と、今回の事案を経てもうすぐ契約が切れるという姿の心中。

こんな気持ちで『続き』を待つとか拷問以外のなにものでもないんですけど!!!
という理由での「読むんじゃなかった」です。

城木については常々「城木は追い詰めてナンボ」だと思っている私ではありますが、そんな私をもってしても「親族ほぼ全員逮捕。ひとりのこった従姉妹がその「黒幕」で、しかも従姉妹は<敵>のなかでかなりの地位にあるらしいことが判明」し、『陰鬱に沈み込み、凄愴の気さえ感じられるほどにやつれている1年前とは別人の風貌』になってしまうだなんて、そこまでは求めてないよう・・・となるわ。

ていうか、そんな城木を見て酷く動揺してんじゃないわよ宮近!!。こういう時こそ男を見せろよ宮近!!。
宮近は今回保身のために捜査の中止を泣きながら進言するという見せ場があって、そこは満足でしたが。

満足と言えばそんな城木に対してユーリが夏川と由起谷に『まっすぐに生きろ』と伝言を託すんだけど、託された2人がユーリが去った「ドアに向かって」自然に頭をさげていた、というこの場面が特捜部がこれまでに闘ってきた日々が詰まっているようで、グッときてそしてときめいた。

そんなユーリとライザは「警察官としての自覚」というか、警察官として自分はなにをなすべきかという「道筋」が明確になりつつあるのに対し、なかなか「本心」を見せてくれない姿だけど、それでも最後まで共に戦ってくれるだろうと、特捜部を見捨てたりはしないだろうと思っていたものが今回の事案で「もしかしたら」という不安に代わってしまった。

というか今回は新キャラが登場するんですよ。これがまあまたカッコいい男でして、準レギュラーになるだろうと思っていたらまさかまさかの4人目の突入班員として特捜部入りするってんで「マジかー!」と喜んだけど、でも機龍兵ではなく既存の機体に乗るってなことで、3人とのその「差」がこの先どう展開するのだろうと楽しみに思う一方で、官邸によるミャンマー計画の「真の目的」が突入班3人の抹殺=龍髭の回収にあったことを考えるに、新キャラは3人の文字通りのバックアップ要員、ということなのではないか・・・と思っていたらその通りのことを姿も考えちゃってるもんだからイヤーーーーーー!やめてえええええええ!となりました・・・。

ミャンマーで和義幇の關が「鬼機夫」と呼ばれる世界に12人しかいない鬼神としか言いようがない機甲兵装の乗り手のひとりであることが判明するんだけど(これがまたクッソかっこいいんだ)、その「凄さ」を目の当たりにした姿がこの先「何」を求めるのか、今はそれを考えたくないの・・・。


はー、こんな気持ちで次作を待つとかマジで辛いわ・・・。