『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』最終話

ミラージュさんだったら心の奥にどんな感情があれ結城が馬鹿息子に銃を向けた瞬間迷わず殺っただろうなーとか思ってたら、そうしてれば「丸く収まったのに」というオチでものすっごい手玉に取られた気分・・・。
後味の悪さはむしろ好物だし、初回から稲見か田丸のどちらかが、はたまた二人ともが「あちら側」に行ってしまう(戻ってしまう)のではないかという心配と期待をしてるところはありましたが、特捜班全員闇落ち・・・・・・・・・・・かもしれないエンドなんてものは全く思いつかなかった。
結城とのバトルで得意の背負い投げキメようとするもなかなか決まらずひっくり返され後頭部殴られて意識を失うというベタな班長や、稲見の「お前は今死んだ」には思わずクスリとさせられたのに、その班長や稲見がこんな目をするラストカットが待ってるだなんて。
テロリストってのはこうやって生まれるんだな。
ていうか平成維新軍とか田丸の勧誘とか、残された要素がとりあえずぜんぶ特捜班の「その後」で回収されちゃったよ。すげーな。
ていうかこれって警察庁警備局長である鍛冶の物語だったんだな。これが一番の驚き。
以前鍛冶は稲見に「薄汚い仕組みを変えたかったら、正義感に縛られて動きを不自由にするな。善も悪もすべて取り込んでしなやかに動け。そうやって蓄えた力でいつか本物の悪を叩けばいい」と言ったけど、鍛冶もまたこういう経験をしたことがあるんじゃないかと、こういう経験を繰り返してきたんじゃないかと思うの。でもそのたびに飲みこみ、でも消化することはなく腹の裡に留めたままで、本物の悪を叩く機会を得るために、その時に発揮するための力を携えておくために「あちら側」には行かず「こちら側」に留まり続けているのではないかと。
特捜班はそのための「力」なのだろう。鍛冶はほんとうに作った時点では小石だった特捜班をダイヤモンドに変えようとしてたんだろう。
でも鍛冶は特捜班の「心」を読み違えた。そのせいでここまで磨き育てた力を失った。
今回の事件は特捜班にとって「通過儀礼」であり、稲見が結城を撃てなかったことを「見誤ったかな」と言うからには結城の行動はある程度鍛冶が描いた絵図、ということになるのでしょうが、自分たちが何をさせられていたのか、自分たちの本当の役目が何であったのかを悟った5人の視線を受け止めながらその場を去る鍛冶からは孤独を感じつつ、特捜班は文字通り『駒』でしかなかった虚しさたるや。
特捜班の選択も気になるけどそれよりわたしは鍛冶のこれから、息子のテロ行為をもみ消しそれをほじくりかえされそうになるとその息子を「息子は二人いるから一人死んでもどうにかなるだろう」と餌として差し出すような人間がトップに立つこの国で鍛冶はこれから何を目指すのかということのほうが気になるわけで、だからわたしにとってこれは鍛冶の物語。
そしてだからこそ思う。特捜班は全員揃って「こちら側」に留まって欲しいと。鍛冶のやり方を受け入れられなくてもいい。鍛冶と袂を分かってもいい。だけどそれぞれのやり方で薄汚い仕組みを、本物の悪を叩くべく「こちら側」で力を蓄えて欲しいと。もしも鍛冶が暴走しかけたらそれを止めるのは特捜班であって欲しいと、そう思う。