月村 了衛『機龍警察 未亡旅団』

世界観と設定の説明及び人物紹介の1作目、元IRAのテロリストであるライザ・ラードナーが主人公の2冊目、元ロシア警察官であるユーリ・オズノフが主人公の3冊目ときて、4作目にあたるこの作品はついに私の最も愛する由起谷と城木のW主人公でございます!二人とも美形!!!(これ重要)。
ライザとユーリの物語は二人が抱える壮絶な過去が描かれていたわけですが、それは二人が外国人であるからこそ(そこが日本ではないからこそ)の緊迫感であり絶望であり、ゆえに壮絶だったわけで、なんだかんだで平和である日本で生まれ育った日本人の主人公ではそれは望めないだろうと、これまでと比べて毛色の違うものになるというか、はっきり言ってしまえばスケールダウンするのは仕方のないことなんだろうなーと思いながら読み始めました。
全然そんなことなかった。今回は由起谷の過去と城木の家庭について描かれているのですが、状況は異なれど二人とも母親から捨てられたことが人格形成に多大な影響を及ぼしているというのです。由起谷は荒れ城木は父や兄との関係が上手くいっていないのです。その普通とは言わないけど決して珍しくもなんともない二人の物語が「黒い未亡人」として国際的に有名な女だけのテロ組織と密接に結びついてしまうのです。あたりまえに。
まぁ物語の始まりである由起谷と少女の出会い、ここだけが“ご都合展開”ではあるかなーと言えなくはないけど、でも読み進めていくうちにこれは『運命』だったんだなって納得できちゃうんですよ。由起谷と少女が出会ってなければ、少女が出会った“日本の警察官”が由起谷でなければ、こういう結末にはなりえなかった。これが運命でなくてなんなのかと。
最初に主人公が美形であることが重要と書きましたが、『異国の少女を守る由起谷』ってもうこれが全ての場面において絵になるんですよ。少女の心を動かしたのは由起谷の中にいる鬼、母親に棄てられた過去、それらからなる由起谷の想い、少女に対する真心であるわけだけど、これが禿げ散らかしたオッサンだったらこうはいかないだろうと、由起谷のルックスがあってこそのラストシーン、少女の手紙が効くわけですよ。
一方の城木は、これまたすごい関わりようで、<敵>との闘いというシリーズの縦軸においてこういう展開にしてくるかと、こういう立場に立たせちゃうかーと興奮しまくり。軟禁状態で顎がざらざらしちゃう城木とかまさにこれまでに見せたことのない顔で、イイ!すごくイイわー。城木は追い詰められるだけ追い詰めたほうがいいと思う。苦悩するのが似合いそうだし、そんな城木を見かねて宮近確変!!ってな可能性もあるし。城木に関してははむしろこれからのほうに更なる期待が高まります!!。
シリーズ的にも<敵>の存在は未だ見えないものの特捜部以外のサブレギュラーがじわじわと増え、そいつらが敵なのかそうでないのか、特捜部以外の部署間でも駆け引きがあったりするのでまだまだ予想がつかないし、特捜部内でも城木を筆頭に事件を重ねていくことによってじわじわと何かが変わりつつある。三人の龍機兵搭乗員でさえも。
でもそんな中で沖津部長だけが何も変わらない(何も描かれない)。沖津の背景には何があるのだろう、どんな物語が待っているのだろうか。あーもう続きが楽しみでたまらない!!。