桐野 夏生『緑の毒』

緑の毒

緑の毒

“昏睡レイプ”というありとあらゆる犯罪の中でも最低中の最低、卑劣以外のなにものでもない犯罪を題材にして、レイプ犯、レイプ被害者たち、レイプ犯の妻の心情を描いた作品・・・・・・ではあるのですが、レイプという事犯そのものに纏わる心情というよりも各人の生き様(そこまで大きなものではなく日々の生活)に焦点を当てて描かれているので、このところの桐野作品と比較すると久々に“読みやすい”作品でした。
内容は相変わらずのエグさだし、全編に“貧富の差”“社会的弱者感”がどんよりと横たわってるしってんで陰鬱とした気持ちになりますが、まぁそれで被害者たちの生活自体は何かが変わるのか?と言ったら一時的には多少上向くかもしれませんが(補償等で)でも多分結局は『貧は貧』として生きてくしかないんだよね・・・と思うと救いはないけど、それでも「ざまあみろ」的な後ろ向きの憂さ晴らし感は味わえます。
そしてやはり女が集まる職場は怖い。トイレットペーパーの扱い方のくだりとかほんと怖いわ。