堂場 瞬一『夜の終焉』

夜の終焉 上

夜の終焉 上

夜の終焉 下

夜の終焉 下

帯に犯罪被害者家族と加害者家族云々という文字が大きく書かれていたのでその手の話に対するありがちなイメージを抱きつつ読み始めたのですが、面白かったです。面白かったというのは語弊があるというか・・・“面白い”話ではないのですが、単純な加害者(家族)と被害者(家族)の物語ではなく、心情的に加害者と被害者の立場が逆転していて、それに否応なく残された家族やその周囲の人間も巻き込まれ、そしてそれを20年近くたった現在でも引きずり続けている・・・その“捩れ”が視点としてちょっと目新しくて面白かったです。それに加えて双方の息子(視点)の物語に絡む横軸として現在進行形の物語が用意されていて、どちらもそれ単独の物語として成り立つぐらいしっかりとしたものなので、読み応え2倍です。まぁ被害者息子サイドの物語に加害者息子が食い込んでからの展開は若干強引というか、多少ご都合展開に読めてしまいましたが、前半でちゃんと伏線を張っているし事件が起こった“汐灘”という街の人間関係の“狭さ”であり“閉塞感”でありを丁寧に描いているので、そういうこともあるかなと納得できる範囲。多分この地方都市特有の空気感ってのが肝、なのだと思った。
この作品は既刊の「断絶」と「長き雨の烙印」に続く「汐灘サーガ第3弾」だそうで、このところ堂場さんの作品から遠ざかっていた(理由は自分でも不明)私は実はこれが初「汐灘サーガ」です。なので前2作との繋がりがあるかどうかは不明。読んでいてそれらしき描写は読み取れなかったけど。