小林 由香『ジャッジメント』

ジャッジメント

ジャッジメント

第33回小説推理新人賞受賞作です。
増加する凶悪犯罪の抑止として新たに法整備された「復讐法」。適用が認められた場合、被害者遺族は従来の法で裁くか復讐法かどちらかを選ぶことができる。復讐法とは、犯罪者に対し犯罪者から受けた被害内容と同じことを合法的に執行できるというものである。但し、執行できるのは「法の選択権利者」に選ばれた被害者遺族本人のみ、つまり自ら刑を執行しなければならない。
という設定の物語で、それ自体はさして目新しさはないものの、刑の執行に立ち会う「応報監察官」という立場の女性視点で描かれているところが特徴です。
読みながら『応報』という言葉がまず浮かぶし、最後に残るのもまた『応報』という言葉。
期待した公的に復讐を見守る立場の人間、それもまだ若い女性を主人公にしたことによるこの作品ならではの何かはなかったけど、ありとあらゆる「報い」に対する無力さにはじわじわと心が削られるようでした。