中山 七里『ネメシスの使者』

ネメシスの使者

ネメシスの使者

凶悪犯罪犯に対し遺族は勿論世論も「死刑」を望んでいたものの懲役刑となった。それから数年後に塀の中の加害者の代わりに加害者家族が殺された状況と同じ方法で殺害されるという事件が起きる。現場に残されたのは「ネメシス」と書かれた血文字。という始まりで、ざっくりと言ってしまえば『死刑制度』がテーマであり、『復讐』の物語。それはもうともすれば読み飽きたと言ってしまいたくなるほど描かれまくりのテーマだし、復讐だってよほど上手く「見せる」かそこに何がしかのドンデン返しでもなければ「よくある話」で終わってしまったりするのですが、これは最後まで一気に読ませてくれました。
とても緻密に積み上げられているので、全ての“視点”には必ず役割であり意味があろうことは明らか。だから犯人が確保され(これはこれでまさかこの人がと驚き、そして解ってみればこの人しかいないだろうという説得力がある)、残りページ数を考えるとこれからの展開にそれらが関係することも想像ができてしまう。そういう意味では“予想通り”であり“予定調和”なのですが、とにかく緻密で無駄がない話運びなので変な表現になりますが付け入る隙がないのです。ただただ黙って読み進めることしかできない。どう考えても物語の鍵というか、それこそ“元凶”だろうに途中からその存在がまるで消えてしまっていた人物の『真意』が明かされるタイミング、そしてその内容も物語の〆として完璧で、本を閉じた瞬間「小説を読んだー!」という充実感に包まれました。