貴志 祐介『兎は薄氷に駆ける』

叔父の殺人容疑をかけられて捕まった青年の弁護をする側の視点のリーガルミステリーで(どこに“リアルホラー”要素があるのだろうか・・・)、内容を一言でいえば「冤罪で服役中に死んだ父親の復讐」なんだけど、青年の動機であり目的と、それに加担する者たちの存在といったあたりは面白い設定だとは思うんだけど余計な描写というかよくわからん描写というか、そういうものが結構あって結果「よくわからん」という読後感でした。

主人公は青年ではなく弁護士から調査を依頼された中年男性で、「リストラ請負人として対象者の弱みを握るために調査活動をしていたが、リストラ目標を達成したら自身もリストラされました」というのがこの人物の背景なんだけど、失業中だから時間があることと、調査のノウハウがあることにするためだけの設定でしかなくて、この案件に関わることで主人公自身の人生になんらかの変化や影響があるわけではないから何を読んでたんだろう・・・という感じが残るし、殺人犯として逮捕された青年が女性スタッフ目当てでコンビニに通ってたってのはなんだったんだ?。2人とも結構なクセつよキャラとして描いてるからここぞってところで重要な証言をしてくれるとか後々なんかあるんだろうと思ってたけどなにもなく、マジでコンビニのくだりは意味がわからん。
凶器である車のキーがスペア含めて2本あることを検察に言わない警察(の言い分)に至っては不可解すぎて悪役であるはずの検察官が気の毒になるレベル。

これはほんの一例でしかなくこんな感じの「よくわからん」が続くのに、それでも一気読みさせるところは凄いんだけどね。