穂波 了『忍鳥摩季の紳士的な推理』

アガサ・クリスティー賞作家渾身の特殊設定ミステリー」という帯文に惹かれて手にとりました。初めての作家さんです。

法整備はできていないものの警察に「超常現象の専門部署」があって、4話構成の1話めは一般人であった主人公が2話めでは「超常現象調査師」になってるぐらいあたりまえに超常現象が起きるという設定なんですが、受ける印象としては不可思議な殺人を可能にするための(作劇上都合のいい)超常現象であり、これまた帯に書かれているように「超常現象は『人の切なる想い』が生み出している」ので各話とも結局は「動機」の話なんですよね。
だからなぜ超常現象が起きるのかではなくなぜ超常現象を利用して殺人を犯したのか、という話になるのでそこに目新しさはありませんが、主人公自身が特異体質なんですよ。

主人公は常に「先生」と行動を共にしてるんだけど、この先生は他人には見えず主人公の摩季だけに見えてる存在なんですよね。そして事件の真相を見抜くと摩季と「交代」して摩季の肉体を使って謎解きをするんだけど、それは作中で描かれる「超常現象」とは種類が違う現象なのでその解明が作品を通しての縦軸となっていて、これがなかなか好みのトンデモでしたw。
先生の正体が○○だと解ると、主人公が先生にプロポーズを期待するような描写があったことが引っかかるけど、○○は死んだけど先生は消えなかった!やったー!という主人公のある種のドライさ含め消えないんかい!というオチは嫌いじゃないw。