第21回「このミステリがすごい!」大賞受賞作です。
いきなりですが、読んでる最中も読了後も「これがこのミス大賞・・・?」という思いが消えなかった。
まどふき先生と呼ばれる名物校長だったが今は認知症を患う祖父の「知性」を留めたくて孫娘が「ネタ」を持ってきて、孫娘の話を聞いた祖父が紫煙を燻らせながら謎解きという名の「物語」を描く安楽椅子探偵モノなんですが、この賞に対する私のイメージはよくもわるくも「エンタメ性」でして、この作品にそれを感じることがなかったゆえの疑問です。
この作家さんは本業は構成作家だそうで、確かに登場人物の書き分けはそれを感じさせるもので、特に安楽椅子探偵であるお祖父ちゃんが『誰に演じさせる?』をテーマに6時間は呑めるね!ってなぐらいに魅力的だし、事件の様相も不可思議なんだけど、肝心の謎解きに全くワクワクさせられない。
主人公の孫娘をミステリ好きという設定にしミステリ蘊蓄を語らせてるけどそれも退屈でしかないというか、はっきり言って作家の独りよがりにしか思えない。
終盤になって主人公自身が事件の当事者となり、そこで明かされる「事実」はそれまでとは打って変わってハードモードだもんでそこまでのゆるっとした空気感はそのためのもの、ここで作品のカラーがガラッと変わるという仕掛けかと、それはこのミス大賞っぽいな(私のイメージと合致する)と思ったのに、ドタバタした末に「主人公に好きな人ができました。さてどっちでしょう?」って、どっちでもいいわとしか・・・。
読み終わってみるとタイトルの「意味」がよくわかるんですよね。
二人と絡む周囲の人間のキャラクター性を含め孫娘と祖父の物語としては心温まる作品なんですよ。
で、帯に岡村隆史さんの名前がデカデカとあることだし、おそらくですがこの作品を「売る気」だと思うんですよね。そのために「このミス大賞」という箔付けをしたのだろうと私は思う。それぐらい“このミス大賞受賞作”としては違和感が残る。