山下 貴光『筆跡はお見とおし』

筆跡はお見とおし

筆跡はお見とおし

何の気なしに手にとった「ガレキノシタ」が良かったんで、そのあと「イン・ザ・レイン」「となりの女神」と読んで、どれも作り話という意味での小説の中にある現実味、そのバランスが好きだなという印象を持っている作家さんですが、これはダメだった。幼馴染から市内のあちこちに書かれた落書きの犯人を捕まえてくれと依頼された探偵と助手。筆跡鑑定を武器とする探偵は母校の生徒にあたりをつけるが・・・ってな話で、落書き犯を追う中で探偵が抱え続ける過去が見えてきて、やがてそれが一つに結び付くんだけど、この真相、真実の苦さは私が好きだと思うところなんだけど、視点となる助手の女子大生の語り口、口語体が好きじゃなさすぎた。装丁の感じからして恐らく最近増えてきた“ライトノベル風”を意図して描かれているのでしょうが(探偵に思いを寄せるイケメン(ゲイ)の存在とかモロにソレだろう)、山下さんの作風に合わないと私は思うなぁ。