山田 正紀『ロシアン・ルーレット』

ロシアン・ルーレット

ロシアン・ルーレット

雨の夜、カラオケボックスで女の死体が発見されたという連絡を受けた若い刑事は、現場で額の真ん中に穴の開いた謎の女とすれ違う。女はバスへ乗り込み、刑事も後を追う。謎の女は刑事に告げる。「このバスは転落する運命にある。でも、いい人間は助かるわ。」一見、いい人に見える乗客や運転手たち。本当にいい人はいるのだろうか。生者と死者、正常と狂気が絡まりあう。謎の女の正体は?そして刑事の運命は。

私がこれまで読んだ山田正紀作品とは雰囲気が違います。なんかムーディー。エロティックバイオレンスサスペンスホラーって感じです。ついでにノワールな感じも漂ってます。なんじゃそりゃと思うでしょうが、でもそんな感じなんだもん。ジャンルミックス。かといってとっちらかっているわけでもなく、虚構と現実の境目を行ったり来たりしながら、毛色の違う短編ホラーを積み重ね、まさかこれで夢オチだったら怒るんだけどと思ったら、物悲しい恋愛の果てにエルロイ風の結末が待ってました。ちょっと驚き。絶妙のバランスです。
モノクロームな雰囲気はとても好きです。嵐の中で薄暗い光を灯したバスに乗る色彩のない人々、そんな中に紛れ込んだ一人の男、そして接点となる女の額に開いた穴だけが赤い。なんとなく押井守作品と似た印象。あんまり血が通ってなさそうなあたりが。