タイトルでわかる通り宿敵ウォッチメイカーがライムを殺しにやってくるという物語なんですが、ウォッチメイカーがNYにやってきた“方法”が携帯ヒーターと酸素ボンベ抱えて飛行機の貨物庫に潜むというものでして、いきなり笑ったw。
チャールズ・ヘイルの視点でも描かれるので「ライムを殺す」という目的があることはわかるんだけど、それとは別にウォッチメイカーとして「仕事」も遂行してて、こちらがなかなか見えてこない。二重三重どころか幾重にも「罠」が張り巡らされていてさながら蜘蛛の巣のようなんですが、今作はその蜘蛛の巣の横糸をロナルド・プラスキーが担っていて、訳者あとがきでも書かれているようにプラスキーの成長が強く印象に残る。
だってライムが自身になにかあったときの「後継者」にと考えてるぐらいですから。
でもその描写があった矢先にプラスキーは窮地に追い込まれることになるので、後継者云々はフラグかー・・・と思いきや、それもまたヘイルの罠のひとつでしたってんで分かっていても見事に転がされてしまった。
ライムが「自分の命と引き換えにしても救いたいと思える相手」としてアメリア、ロン、クーパーと共にプラスキーの名前も挙げたのにはずっとシリーズを読み続けている者として胸が熱くなった。
私はウォッチメイカーのことをそこまで評価してはいないので「犯罪王」としてモリアーティと並べることには否定的なものの、今作は「現代の犯罪王」であると認めてもいいかなと、「ウォッチメイカー最後の事件」に相応しい読み応えでした。