ジェフリー・ディーヴァー『ソウル・コレクター』

ソウル・コレクター

ソウル・コレクター

「データ」という目に見えないものを駆使して犯罪を犯しライムたちを混乱させた今回の敵って、正体が明らかになるまではシリーズ史上最強と言っても過言じゃないぐらいだったと思う。攻撃に対して「時間をかけて」冤罪であるということ、間違いだということ、誤解だということを証明することしかできなくて、しかも自分のみならず自分以外の大切な人に対しての攻撃で、それを自分自身の力ではどうにもすることができない。物理的にも精神的にもとても有効な攻撃だと思うのですが、それを指一本(実際にはキーボード叩いてるわけだけど)でやってのけた今回の敵は、ライムたちへの攻撃の効果が自分だったらどうなるだろうと想像できるだけにこれまでにはないリアルな恐怖を感じることができました。それに、電力の供給を止められたら最新鋭の各種機器を使えないことになるわけで、「最強ラボ」の弱点が見えたともいえるしね。でもその犯人が如何せんショボい・・・ショボすぎる・・・・・・。敵の正体が明らかになった瞬間からの失速っぷりはこれまた過去最速でした。

以下、背景色でネタバレしてます。



ライムはメインとなる事件と作中時間としては並行して異国(イギリス)での事件にも関わっていて、そちらはこの本の中では現地担当者からの報告という形でしか描かれていないのですが、この犯人が前作で登場したウォッチ・メイカーなので、まぁ一種の繋ぎというか、それが次の作品かはわかりませんが、ウオッチ・メイカーとの再戦への序章という位置づけだと考えれば(そして今回のテーマであった『データ犯罪』が今後における反省材料になるのならば)敵のショボさもまーいっか、と思えます。