ジェフリー・ディーヴァー『ブラック・スクリーム』

ブラック・スクリーム

ブラック・スクリーム

ニューヨークで拉致及び殺害未遂を犯し「作曲家<コンポーザー>」と名乗る犯人が国外に逃亡する。ライムとアメリアとトムは犯人を追ってイタリアへ。

というわけで、今回はライム&アメリアシリーズ初の海外が主戦場です。自前の設備が使えず、信頼する仲間の力も借りることができず、土地勘もなければ言葉も不自由、おまけにライムたちの存在をよく思わないナポリの捜査関係者・・・というアウェイ状態での捜査だという目新しさはあるものの過去に対峙した名犯人たちと比べると今回のコンポーザーはあらゆる意味で“弱い”という印象が否めず、おまけに見知らぬ名前になかなかな馴染めず最初は読み進めるのに時間がかかりましたが、人物の把握ができればそこからはいつものように一気読み。それがライムとアメリアにとって「壁」となる人物との和解と同じタイミングだったもんで、まさに壁が破られ視界が開けたような感覚でした。

弱いと感じたコンポーザーも実はとても魅力的だったし、物語的にも今回は一本線ではなく二つの事件捜査が平行して描かれ、ゴールだと思ったところはゴールではなく、ゴールだと思ったところの先は川だった!的な感じで事件の様相がガラッと変わってしまったりするので文字通り「目が離せない」。さらにこれからのシリーズ展開に大きく影響を及ぼすかもしれない「誘い」をライムが受け、おまけにラストはライムとアメリアの結婚式(に向かうところで終わり)と、まんぷく満足であった。