主人公の母親を「ムシャクシャしていたから」という理由で斬殺した男が畳の上で弟の腕に抱かれて死ねるとは。
救い小屋を公の仕事にすることをはじめ、あの世の父を驚かせる政を、民のための政をしたいと道長に語る道兼は、そうすることが奪ってしまった命に対する贖罪になると思うところもあったと思うんだ。
でも結局それは叶わなかった。赦されることはなかった。
それでも病床で読経しながら「罪人のくせに浄土に行こうとしているのか」と自嘲する道兼に寄り添ってくれる家族がいてよかったよ。
たとえ弟の内心がどうであっても、家族がそばにいてくれてよかった。
その死はあっという間にド迫力女院様によって上書きされてしまったけど(倫子を「あんたは黙ってろ!」と一喝できるのは詮子様ぐらいだよなー)、それがまた道兼らしい。
ものすごい体勢というか勢いでぶっ倒れてたね、道兼。最後まで玉置玲央の役者魂を見せてもらいました。
弟を虐めすれ違っただけの女を斬る狂人という初見イメージから始まり、汚れ仕事要員として扱われ、兄と跡目争いしてるつもりが全く相手にされてなくて、家族に捨てられ自暴自棄となり、今の自分の元凶ともいえる弟の励ましで立ち直り、「汚れ仕事は俺の役目だ」とかっこよくキメたせいで疫病に掛かって死ぬという、そんな男を「藤原道兼」として成立させたのは玲央くんの力だと思うし、段田安則の兼家と共にここまで物語を牽引した立役者であったとわたしは思う。
ここまで楽しませてくれてありがとう道兼。