乃南 アサ『緊立ち 警視庁捜査共助課』

タイトルの「緊立ち」とは「緊急立ち回り情報」のことで、指名手配されている人物が「今ここにいる」という情報が入ると捜査員は可能な限り迅速に現場に向かい捜査にあたることになる・・・という物語で、警視庁内にある「捜査共助課」に勤務する二人の女性警官を中心とする刑事たちの日々を描いた作品です。

二人の主人公は共に指名手配犯を追うことが職務なんだけど所属している係が異なっていて、アラフィフの燈はわずかな情報を元にどこへ逃げているかわからない犯人を追跡する「広域捜査共助係」に属し、アラサーの小桃は指名手配犯の顔と特徴を記憶し街を行き来する人間のなかから指名手配犯を見つける「見当たり捜査班」に属しメモリー・アスリートと呼ばれていて、全くといっていいほど異なるそれぞれの捜査手法・捜査工程だけでも面白く、そのなかでは男たちの感情を含め警察という男社会で働くことの難しさも(さわり程度だけど)描かれるし、さらに燈と小桃の家庭問題もしっかり描かれている(印象としては仕事と家庭の描写が半々ぐらいの感じ)ので「働く女性」の物語としても読み応えがありました。