羽田 圭介『盗まれた顔』

盗まれた顔

盗まれた顔

手配写真の顔を憶え、その記憶だけを頼りに雑踏の中から指名手配犯を見つけ出し逮捕する見当り捜査官の物語で、主線は主人公がその見当り捜査能力を見込まれある企みに巻き込まれるというものなのですが、むしろ見当り捜査官たちの日々の方が読みたかった。
主人公は男女各1名の部下と3人1組として日々の捜査に当ってるんだけど、チームとして動いてるとはいえ逮捕という“結果”は手配犯を見つけた個人のものになるようで、だから一人はコンスタントに犯人を見つける一方でもう一人は数か月見つけられないなんてことになるわけで、当然そこにはいろんな感情が生まれるわけですよね。主人公の目線を通しその過酷さは描かれてはいるものの、主人公目線でしかないので一方向でしかなく、そこを描く物語ではないと分かってはいるのですが「そこ」が読みたかったなーと。
私が思う“羽田圭介らしさ”は主人公の同棲相手に対するアレコレ描写にバッチリ出ててそこはニヤニヤ(笑)。