月村 了衛『香港警察東京分室』

国際犯罪に対抗すべく日本と中国の警察が協力するという名目で警視庁内に日本と香港警察それぞれ同階級・同人数による「特殊共助係」が新設されるが、接待目的の「分室」と呼ばれ揶揄されている。
そんな「分室」に香港でデモを扇動し多くの死者を出した上に殺人を犯し日本に逃亡した元教授を逮捕するという事案が与えられる。捜査開始早々に香港の犯罪グループの協力が疑われ、捜査員たちは銃撃戦に巻き込まれるが、捜査を進めた先には見えてきたのは国家の謀略であった。

ざっくりした括りをしちゃうと「異なる人種の寄せ集めチーム」による警察小説はもはや月村さんの独壇場だな!。
今回は香港(中国)と日本の二カ国だけど、それぞれ異なるバックボーンをしっかりと描くことで多種多様な人間たちを描き、その人間たちが時に暴走し時に協力し合って「真実」目掛けて突き進んでいく物語の熱量がいつもながらに素晴らしい。
その中に香港の2047年問題という「現実」を織り込む手際も見事だし、それでいてアクションあり駆け引きありでエンタメ性も抜群と、月村作品の魅力がぎゅぎゅっと詰まっていて満足ですが、これ1作で終わらせるにはもったいないキャラクター揃いなので、これもシリーズ化してほしい。