月村 了衛『機龍警察』

なにこれ超面白い!!!。


吉川英治文学新人賞日本SF大賞受賞ということで発売当時結構話題になっていたものの、私SFが苦手・・・というか、銃やナイフを使った近接戦闘ならともかくほとんどロボですよね?な武装でのバトルが具体的に想像できないもんで気にはなりつつもスルーしたんですよね。それ以降も続編が出るたびに「機龍警察」というタイトルを目にするも、おそらく私には読めないだろうと思っていたわけです。でもかなりの高評価なのでこれは何が何でも読まなくては!と思った「土漠の花」の著者名になんか見覚えがあって、調べてみたら気になりつつもスルー中のシリーズの著者ではないか!!・・・ってなわけで、それじゃあってんで先にこの作品を手に取りました。
もう一度書いておきます。


これすっごい面白いんだけど!!!!!!!!!


『近接戦闘兵器・機甲兵装が発達した至近未来、警視庁は三人の傭兵と契約した―――。』と帯にある通り、「機甲兵装」という兵器(3メートルぐらいの人間が搭乗し操縦するロボみたいなもんです)が存在していて、それを使ったテロや民族紛争が激化する中、日本警察は「龍機兵(ドラグーン)」という最新型を導入し、その操縦士として三人の「傭兵」に警部の身分を与え契約した・・・ってな設定なのですが、SF要素としてはこの機甲兵装、龍機兵という兵器だけでそれ以外は龍機兵を柱とする特捜部とそんな特捜部を敵視する日本警察との対立を描きつつSATを狙ったテロ事件を追う物語で、それは所謂普通の警察小説と言える。テロリストが使う武器、それに対抗するための警察の装備がロボのようなものなだけで、やってることは法改正によるトップダウンで特別な立場を与えられた者たちが独自の捜査法・嗅覚でもって犯人を追い事件を解明するというはみだし刑事(チーム)ものと言えるのです。
でもただのはみだし刑事モノじゃない。完全版というだけあって巻末に著者インタビューや著者による自作解説が収録されていて、その中で月村さんが“この作品で一番の大嘘は機甲兵装ではなく警察が傭兵を雇っているということで、『木の葉を隠すには森の中へ』という有名なトリックのように、警視庁が傭兵を雇う、しかもそのうちの一人はテロリストであるというあり得ない事態をありにするために、この法律とこの法律を変えればありになるといういことが取材でわかってきて、結論として出てきたのが機甲兵装なんです”と仰っているように、その中心にいるのは三人の「傭兵」で、彼らのもつ経験と技術が捜査を引っ張るのです。これがとても魅力的。
ていうか、特捜部を率いる沖津部長(元外務官僚)以下カッコいい男たちばかりでだな!!。人間関係としてはシガリロを吸いまくるキレ者の沖津(渋めのダンディおじさま)がいて、その下に警察官僚の理事官が二人いて、さらにその下に主任が二人いるんだけど、この同じ立場の二人同士がかたやザ・官僚と温厚優男、かたやガチムチと昔暴れてた過去を持つ美形とお手本のようなタイプ違いで、でも仲が悪いわけではなくむしろ共に戦う同志のような間柄で(理事官の二人なんて職場では言い合ったりしてるのに二人っきりになると友人としての顔になるとかー!)、それぞれ特殊な経歴の持ち主である上司の警察組織に対する想いにちゃんと共鳴していて、龍機兵の操縦士である三人の傭兵含め特捜部内の人間関係萌えの宝庫なんですよ!!。
シリーズ化されていてまだまだ続きがあるとわかっているからってのはあるにしても、この1作目は世界観と状況説明、そして警察上層部にいる敵の存在が明らかになったところで終わっているのでまさに「俺達の戦いはこれからだ!」でしかないんです。でしかないのにこうまで面白いってのはちょっとすごい。すごすぎる。
というわけで、超遅ればせながら私も機龍警察追い始めます!!続きがたのしみー!!(巻末の解説、2巻目以降への言及をさけつつ読んだもののチラっと目に入っちゃったんだけど4巻目は温厚優男の城木と昔暴れてた美形の由紀谷(この苗字がまた似合う!)のW主人公だそうで、ええ、もちろん私は一目見て(一読して)この二人が気に入ったわけで、もう楽しみすぎてまじヤバイ(笑))。