石持 浅海『あなたには、殺せません』

犯罪の発生を未然に防ぐことを目的とし、犯罪を犯すか悩む人たちの相談に乗るNPO法人があって、殺人を考えている人の相談に乗る「一号室」で「担当者」が犯罪予備軍たちの考えであり計画の穴を丁寧に一つずつ指摘し、殺人という行為とそれによる逮捕を逃れることがいかに難しいかを説く短編集
・・・なのですが、相談したことで相談者たちはみな「閃いて」しまい結局殺人に突き進むという、意地の悪い作品集です。これを倒叙ミステリと言っていいのか悩むけど。

これだけ検討したというのに最初の1編を除きほぼほぼ「思い通り」にはならないんだけど、その「結果」について「担当者」の反応は一切描かれません。
結果的に背中を押してしまっているのに相談者が退室すれば「担当者」の仕事はそれで終わる。そこがなにより意地が悪い。そしてそこが好き。