- 作者: 石持浅海
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2015/10/22
- メディア: 単行本
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ゲリラ雷雨で婚約者が死んだ女がバイト先の常連客に計画立案を手助けしてもらい、たったひとりで汐留にある複合商業施設でテロを起こすってな物語なんですが、テロ実行当日から話が始まるんですよね。劇中での発想が突飛すぎていきなり置いてけぼりです。で、そこからなぜ“モモちゃん”が大量殺人を志すようになったのか、そして“五人委員会”のメンバーたちはどんな目的で、どんな思いでモモちゃんの計画に協力したのか、モモちゃんによる大量殺人の合間に回想として、また実行当日の各々の心情として徐々にそれらが明らかになっていくという趣向なんですが、明らかになっても、いや、なればなるほど、突飛さが増すという(笑)。
そして石持さんのエグイところは無差別に殺される人間側の視点もあることなんですよね。心情ではなく視点。なんでこの人物を地方から遊びにきた日本人ではなく外国人にしたのか、私ではその意図を読み取れなかったんだけど、とにかくこの外人が目撃し続ける日本のオバサンの描写が酷い。おそらく常習者でしょうから因果応報ってことなんだろうけど、それにしたって報いがエグすぎるー。
エグいと言えばモモちゃんに加担する委員会メンバーたちの“真の目的”も。全員が全員じゃないけど、ゲスいのが何人かいてですね、そいつらもしっかり報いは受けるんですが、でも一方で実際にモモちゃんによる大量殺戮を目撃し、正義感とモモちゃん愛に身体を突き動かされモモちゃんの行為を止めようとした結果アッサリ殺されるメンバーもいるんですよ。
委員会メンバーのみならず、次々と殺されていく被害者たちにもそれぞれこの場にいる目的・理由があって、それは人生における一日で、そこには何がしかの物語があるわけだけど、世間的には「被害者○○○人」の一人でしかない。それは自然災害だろうが人災だろうが同じこと。事件の目的・真意がどこにあるかわからないままでは、いやわかったとしても、多分世の中はそんなに変わらない。やがて風化してしまう。いつもながら後味悪いや(そこが好き)。