阿津川 辰海『紅蓮館の殺人』

紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)

紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)

あー、館に行きたい・・・・・・
と突如思いたち、書店で目についたこの作品を手にとりました。あ、「館に行きたい」とは館モノが読みたいの意です。

最近よくお名前を目にする作家さんではありますが、私は今回がはじめましてになります。


結論からいうと面白くはなかった。
まず「館」に魅力がない。想像力がピクリとも反応しなかった。
だからその館の構造を利用したトリックも全然ワクワクしないし、謎解きの過程、真相に至る道筋を読み進めるのは結構苦痛でした。

でもこれ、謎解きを主題にした作品じゃないよね?。
大事な存在を喪った過去を持つ元探偵と、その元探偵に憧れ探偵になりたいと思ったけど「俺の探偵」と出会ってしまったワトソンポジションの高校生と、探偵として生きることしかできない高校生の、それぞれの苦悩や葛藤、そして心理的駆け引きを描くことが主で、山火事という孤立の理由も、売れっ子作家のカラクリ屋敷も、詐欺師も盗賊も連続殺人犯も、それを描くための装置でしかないもの。

主人公である田所と、田所の探偵である葛城の二人がこの屋敷を訪ねてきたのは「憧れの作家が住む館」だからなのに、話が進めば進むほどこの作家のクズ度が高まり、挙句「遺稿とか読みたくないわ・・・」ってなことになってるのには笑ったし(フォロー皆無)、クローズドサークルというわけではないものの金庫を盗んだのは誰だ!?→外部からの侵入者でした!に至ってはちょっと言葉が見つかりません。

だからまあ、私が行きたかった館ではなかった、ということなのだろう。男子高校生二人のBL風味の青春ミステリー小説として読むのが多分(私にとっては)正解だったのだろう。