阿津川 辰海『蒼海館の殺人』


前作の「紅蓮館の殺人」が期待していたものとは違ったうえに読み進めるのに苦労したのでどうしようかと暫し迷いましたが、1作で私には合わないと決めてしまうのは惜しいと判断し、2作目に挑みました。

「うーーーーーーーーん・・・・・・」
読み終わった感想としては↑こんな感じ。

慣れたというより覚悟して読み始めたので読みにくさ(読んでも読んでも進んでる気がしない)は前作よりマシだったものの探偵の葛城がウジウジウジウジウジウジウジ×10 してる描写が続くんで、葛城が復活するまでは前作とはまた違う読みにくさだった、というかもうはっきり言っちゃうけど面白くなかった。葛城のみならず田所も自分探ししちゃってるし、この年頃らしいっちゃらしいのかもしれないけどどいつもこいつもめんどくせえなあ!ってな感じでした。

でも救った少年に『ヒーロー』と言われたことで葛城が復活したところからはぐいぐい読めた。葛城の復活と同時に今作のなかでの田所の立ち位置、与えられた役割も明確になり、作中でも語られてるけど「ホームドラマ」として形が定まればあとはもう「真相」まで一気だった。
前作同様「館」はただの舞台でしかなく、館としての魅力、舞台が館である意味などないけど、物理トリックではなく心理的トリックというか、ロジックのなかに心情を組み込むところは前作よりも明快で、そこはおそらくこの人の作品の特徴なんじゃないかな?と思ったのだけどどうだろう?。


それはさておき、今作のMVPは田所と葛城の同級生「三谷」ですわ。所謂「ミステリ(探偵)脳」ではない「普通の高校生」の存在はこの物語のなかで癒しでした。スピンオフ扱いでいいから三谷が主役(視点)の「学園ミステリ」が読みたい!。