方丈 貴恵『名探偵に甘美なる死を』

「時空旅行の砂時計」の主人公・加茂と「孤島の来訪者」の主人公・竜泉佑樹が「素人探偵」として世界有数のゲーム会社のイベントとして孤島に集められ、VR世界と現実の双方で起こる殺人事件を解明することを求められる「館ミステリ」です。

全ての謎解きを終え「事後譚」パートになってようやっとマイスター・ホラが「登場」し、それにより前2作と合わせてこちらもようやく『シリーズ』としての骨格ができたかなという感じではありますが、前2作と比べて今回は「特殊設定」に魅力がなかったんで読み進めるのがちょっと辛かった。私のなかではまだキャラ小説として読めるまでには(シリーズキャラクターが)至ってないもんで。

VR空間での2.3件目の事件(のトリック)はなかなかのトンデモで、体力勝負の犯行を想像するとちょっと笑えてしまったし、実際の殺人もVRという技術=特殊設定 だからこそ成立するものではあるけど、タイムトラベルや地球外生命体と比べると「VR空間」は単体作品ならばともかくこの『シリーズ』と考えると普通すぎると感じてしまうのは、このシリーズに対する期待値ゆえのことだろう。