友井 羊『無実の君が裁かれる理由』

無実の君が裁かれる理由

無実の君が裁かれる理由

  • 作者:友井羊
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2019/08/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

男子大学生である主人公がストーカー犯だと指摘され、バイト先のオーナーシェフの友人が主人公と同じ大学で「冤罪」の研究をしているという縁で冤罪であることを証明すべく協力してくれるという始まりで、登場人物のほとんどが「冤罪」に関わりを持っている・・・ってところに引っかかりさえしなければ、各章は謎解きミステリとして、1冊を通してはいくつもの冤罪を晴らし誰かを救うという経験をした主人公が自分の進むべき道を見つける物語として楽しめると思うけど、私はダメ、引っかかってしまった。

始まりはいいんですよ。主人公がストーカー犯だと「勘違い」された経緯も納得だし、探偵役である女子大生とのつながり方もまあ自然と言っていいものだし、続く主人公の友人がドローン破壊犯だと疑いを掛けられる話も、主人公が関わるキッカケも大学生が“解決”できるレベルの事件であることも違和感なく読めたんでここまではよかったんです。
でも作品の縦軸である探偵役の女子大生が抱える「冤罪」の話がいくらなんでも無理すぎる。過去の殺人事件と現行の殺人事件、それから痴漢冤罪事件の全て「主人公の知人」のなかで展開し解決するってのはあまりにも世界が狭すぎて。主人公や探偵役、さらにもうひとりの探偵といった主要人物は学生で、それぞれ大人、もっというと親のせいで少なからずの傷を負っていて、それを「冤罪を晴らす」ことで自ら乗り越えるというテーマ?は悪くないけど、さすがにちょっとなぁ・・・とう感じでありました。