横関 大『わんダフル・デイズ』

わんダフル・デイズ

わんダフル・デイズ

  • 作者:横関 大
  • 発売日: 2021/02/10
  • メディア: 単行本


盲導犬の訓練施設で訓練士になるべく研修中の歩美が主人公で、犬と会話ができると噂され、訓練士としての腕はいいが対人関係に難があり、そして美形であることから密かに「王子様」と呼ばれる先輩訓練士の阿久津さんが探偵役として、盲導犬が関わるトラブルを解決する連作短編集です。

タイトルと装丁の感じからほのぼの系日常ミステリだと予想するでしょうが、結構ハードです。最初の1編こそ予想通りの感じではありますが、暴行されたことを苦に自殺した恋人の復讐殺人とかフツーにありますし、探偵役が背負う「過去」であり盲導犬訓練士となった「いきさつ」もなかなかに重いものがありますから。各短編に含まれる要素も「リストラ」とか「痴漢」とか「ストーカー」とか「パワハラ」とか「SNSで炎上」などというものですし。

でも全体の印象、空気感としては前向きで明るい。それは主人公である歩美のキャラクターによるもので、なんの物語(背景)ももたない普通の女性がトラブルバスターとして盲導犬と人と向き合いながら訓練士として一段成長する物語としてまとまっているからじゃないかな。

刑務所で受刑者がグループを作り盲導犬のパピーウォーカーを務める「プリズンドッグ」として出会ったラブラドールと出所後に東京で再開した男の話と、盲導犬なので登場するのはラブラドール・レトリバーばかりなのですが、阿久津の“飼い犬”として柴犬が登場するところが特に良し!。柴犬は正義!。