横関 大『いのちの人形』

いのちの人形

いのちの人形

ある科学者が7体のクローン人間を造ることに成功するが、発表の時期を窺っている最中に誕生したクローン羊のドリーに対する世界中の拒否反応から、日本政府はクローン人間を隠蔽する決断を下す。厚生労働省内に「ドールズ」という組織ができ、多額の予算を使い30年近く7体のクローンを観察・監視してきたが、1号クローンが殺害される。
というところから物語は始まり、たまたまそこに居合わせた捜査一課の刑事とサイバー捜査官が巻き込まれることになるのですが、ほんとに「たまたま」巻き込まれてしまう話があればたまたまなどではなくすべて仕組まれていたことだったという話もあるわけで、この作品は後者です。

いやあ・・・まさか最後の最後にそんなびっくり情報が投下されるとは思わなかったわ。確かに若干のひっかりは覚えたんですよね。7体のクローンが誕生した(それに絡んだ)ニュースはもっと大きなニュースの影に埋もれてしまったにしては、その大きなニュースが凄すぎるというか、え?なんでそんな名前にした?とは思ったんです。でもそれが最後の最後、1枚残ったカードを捲ったら「それ」だった瞬間のやられた感たるや!。

クローンについての倫理的・道義的・社会的な問題だったり有用性だったり、そこいらへんはあまり掘り下げられることなくそれは物語の鍵でありながら一つの設定・要素として(だけ)描かれているので、内容のわりには気楽に読めたし、物語として楽しめました。