日明 恩『ゆえに警官は見護る』

ゆえに、警官は見護る

ゆえに、警官は見護る

確かこのシリーズの前作を同じことを思った(感想で書いた)ような・・・と思って確認したらやっぱり書いてたんだけど、今回もまた武本と潮崎のキャラクター設定・関係性だけぼんやり頭にあるってだけで読み始めたら早い段階で「そうそうこんな感じのやつだ」と思い出すことができました。

でも今回は武本が留置所の担当官として勤務する新宿署に連続放火死体遺棄事件の捜査本部の一員として潮崎が詰めているという構図なので武本と潮崎が行動を共にすることはなく、潮崎はこれまたなかなかに強烈な個性の部下二人とのトリオで独自捜査を暴走させ、職場の人間関係に悩みながらもシレっと越権捜査する武本だったりするわけですが、一緒に行動こそしていないもののの武本の視点(話)と潮崎の事件(話)は繋がっているのでバディ感はちゃんとあって、シリーズとして安定しているなという感じ。

最初の事件が起きる(発見される)描写、続いて同じような事件が起きたってところまでは派手な事件のように思えたものの、事件捜査があまりにも地道かつ地味で(潮崎に課せられた役割がそうなので)、真相・結末まで含めて事件の内容自体はあんまりおもしろくはありませんでしたが(タイトルの「見護る」を「みまもる」ではなく「みつめる」と読ませる意味が最後まで読むことで理解できるのはなるほどと思いました)(あと震災の影響で液状化したことによる被害、それによりその後の生活・人生が大きく変わってしまった人々の話としては心が痛みました)、潮崎の部下二人、武本の同僚たちといった二人の周囲にいる人間たちが良い奴も(性格が)悪い奴も変人もそれぞれしっかり描かれているので物語として読み応えがありました。