芹沢 央『貘の耳たぶ』

貘の耳たぶ

貘の耳たぶ

始めて読む作家さんです。
マタニティクリニックで出会った繭子と郁絵は同じ日に男児を出産したが、50時間以上かけて自然分娩で産んだ郁絵に対し繭子は耐え切れず帝王切開となった。自力で出産できなかったことに加え自身が母親との関係に問題を抱えていることもあり不安に駆られた繭子はつい郁絵の子供と我が子のネームタグを取り換えてしまう。という物語で、前半は自らの手で子供を取り換えた繭子の視点、取り違えが発覚する後半は郁絵の視点で描かれます。
私にはまったくもって縁のないテーマであることは明らかなのに、縁がないからこそ読んでみたかった・・・のかなぁ?なぜこの本を手に取ったのか自分でもわからなかったりするのですが、読み終えて何か得るものがあるのかもしれないと、もしかしたら時々ある「本に呼ばれた」ってヤツかもしれないと、わりと期待を抱いて読み始め、序盤は確かにその期待に応えてくれる「ここからどうなるんだろう?」感でしたが、最後は汚い言い方しますがどーでもいいオチだった。なんでこれが「子供のために」ってな話になるのか私にはわからない。そもそもなんで自ら取り換えたのか?という私が最も知りたかった疑問に答えてくれることもなく(繭子パートでその心情が描かれはするもののもっと深層心理にある理由とか、作中の言葉で言うならば“自ら捨てた”先に何があると思っていたのかとか、私が知りたいと思ったのはそういうことだった)、暴露するだけして終わりとか一体何を描きたかったのか全然わからない。分からないのは私が親じゃないから、お腹を痛めて子供を産んだことがないからと言うのならばそれでいい。それでいいというか、やっぱり私には縁のない話だったってことでいいです。