打海 文三『愚者と愚者』

愚者と愚者 (上) 野蛮な飢えた神々の叛乱

愚者と愚者 (上) 野蛮な飢えた神々の叛乱

応化十六年、内戦下の日本。佐々木海人は二十歳になり、気がつけば常陸軍孤児部隊司令官として自分に忠誠を誓う三千五百人の孤児兵を率いていた。月田椿子は、もう一人の自分である桜子を失った後も、少女だけのマフィア“パンプキン・ガールズ”のトップとして、欲望全開で生きている。性的差別、人種問題、それぞれ譲れないものがあり、争いに繋がる。混沌とした世界で、椿子は言う。「欲望がどこへ向かうかなんて、本人にもわからない」


待ちに待ったラシャラシャの続編。前作同様、上巻がカイト下巻が椿子視点の物語です。内容はもう大満足なんだけど、この表紙がイヤ。絵そのものは綺麗だしいいと思うんだけど、ちょっとあからさまにアピールしすぎな気がする。でもこれで売り上げがアップするってんなら我慢するけどさ。
カイト大人になったなぁ・・・。ていうか俊哉・・・(涙ダーダー)。実は俊哉が結構お気に入りだったもんで、「なにやっちゃってんだよぉぉぉぉぉ!」て叫びました、心の中で。キッカケが私にしてみりゃほんと酷い言い方するとくだらない、たったそんだけのことで?と思ってしまうようなことで、でもそれが当人にとってはこれだけは譲れない大事なことなわけで、すれ違いというには哀しすぎる展開に、はぁー、これが戦争なのかもしれないけれど、でも哀しい。そして椿子たちの頭脳であったビリィまで・・・。この先読み進めていくうちに、きっとどんどんと孤児部隊、パンプキン・ガールズともに大切な仲間を失っていくのだろう。そう想うとやるせなさで胸が押しつぶされそうな気になるけれど、名を与えられた主要登場人物の死の向こうには、大勢の、本当に大勢の無駄でくだらない死がある。ビリィの死を特別扱いしなかった椿子を見て(想像して)そのことに気がついた。そしてそれまでずーっと淡々と描写される死者の数に対してなんの感情も抱いてなかった自分に気がついた。戦争こえーよー。