打海 文三『覇者と覇者』

覇者と覇者  歓喜、慙愧、紙吹雪

覇者と覇者 歓喜、慙愧、紙吹雪

噛み締めるようにして読みました。文字通り奥歯を噛むようにして。じゃないとふいに涙がボロって出そうだったから。
読み終わってみて、カイトの物語で戦争という行為の愚かしさや虚しさ、それでもやらなければならない理不尽さを思い知らされ、椿子の物語で戦争すらパワーに変える人々の生命力を感じることができたことで、一つの物語としてバランスが保てていたんだなと改めて感じました。椿子の章がやっぱり足りない。救いが足りないです。救われたくて読んでるわけじゃないし、いくらだってこの後のカイトたちや椿子たちを想像することはできる。でもやっぱり足りないと思ってしまった。わたしの想像ではなく、打海文三の言葉で読みたかったと思ってしまった。
今はまだちょっといろんな想いが入り混じって冷静には読めないので、もうちょっとしたら、最初からちゃんと読み直したいと思う。
でもこれだけは言える。この物語は、このシリーズは、私にとってかけがえのない作品になりました。この痛くて苦しくて前向きで明るくて馬鹿で破廉恥で強くて逞しい物語が大好きです。打海文三は、私の中で永遠です。ほんとうにありがとうございました。