馳 星周『ブルー・ローズ』

ブルー・ローズ〈上〉

ブルー・ローズ〈上〉

ブルー・ローズ〈下〉

ブルー・ローズ〈下〉

元刑事で現在は変わり者の弁護士事務所で調査員をする徳永は、刑事部門のトップである警視監・井口から、結婚した一人娘・菜穂の捜索を依頼された。単純な失踪人探しのつもりでいた徳永だが、菜穂の趣味である薔薇栽培仲間たちの不自然な態度から、主婦達の驚くべき秘密を嗅ぎつける。それはやがて警察庁長官の座を争う二人の権力闘争の材料となり、争いに巻き込まれた一人の女の死をきっかけに、徳永は暴力と欲望と狂気の坂を転がり堕ちてゆく。


最初(特に上巻)は、いわゆる馳独特の文体が抑え目なことに目新しさを感じましたが、読み終わってみたらいつも通りの馳でした。主人公がどんな種類の男であれ、いつも着地点は同じ。でもそれがいいのです。馳に関しては馴染みの着地点に至る過程を楽しむのが肝だと思っているので、それでいいのです。ここ数作、内面から滲み出るような暴力性が薄かったような気がしてたのですが、その点、今作はまぁまぁ楽しめたので満足です。ただまぁ、さすがに今更人妻SMクラブかよ・・・ という古臭さは感じましたが。
しかし元刑事とは言え、徳永の殺人マシーンっぷり恐るべし。テロ対策部隊だろうがSPだろうがSAPだろうが、一人で殲滅ですからね。心の準備の差なんて言われても・・・。