上遠野 浩平『禁涙境事件』

禁涙境事件  ”some tragedies of no-tear land”

禁涙境事件 ”some tragedies of no-tear land”


仮面の戦地調停士の過去がついに明かされる!?
魔導戦争の隙間にある非武装地帯『禁涙境』。特別とされるその場所で、過去に起こったいくつかの残虐な事件。そして、積み重ねられし数十年の果てに訪れた大破局。すべてが終わったその場所で、仮面の男がもたらす真実とは。


<事件シリーズ>最新作。今更ですが、こういうシリーズタイトルだったんですね。このシリーズ、大好物なのですがあまりにも刊行の間が開きすぎるので、新刊が出るたびに「殺竜事件」から読み直さなくちゃならなくて、ちょっと大変です。大好物なのに覚えてないんかいっ!って自分でも思うけど。
前作がとてもよかったことを思い出し、その勢いのまま「禁涙境」を読んだので、ちょっと拍子抜けというか物足りなかった。「禁涙境」で過去に起こった事件を人々が語るという設定で、短編集っぽい作りになっているということと、その場所がある理由で特殊であるため、いわゆる「普通」の事件だということが理由だと思う。
EDの過去が明かされるというのも過大広告。肝心なところは明かされていないし、「!?」←やっぱこれに騙されたよーと思った。
全体を通しては、唐突だなぁという印象で、それは「残酷号」や「魔導師ロードマン」といった存在が突然現れ、当たり前に人々がその存在を認めているのに、この物語内では全く説明がないからかな。それは共に次回作「残酷号事件」で明らかになりそうなわけで、結局のところ「禁涙境」は繋ぎのような扱いということなのだろうか。
ED萌えな人ならば泣いてしまうのでは?な対決シーンは、EDの超人的精神力かと思ったらそんな小細工(小細工どころじゃないわけですが)してたのかよ!な展開でちょっと笑ってしまった。めちゃめちゃハッタリやん。
金子一馬氏のイラストが相変わらず素敵。このシリーズが完結するときには、事件シリーズ画集を出してくれないだろうか。