米澤 穂信『黒牢城』


いやあ・・・やべえな!
織田信長に反旗を翻した荒木村重のところに黒田官兵衛が使者としてやってきたものの交渉は決裂し地下牢に幽閉されることになって、織田に寝返った家臣の人質要員(息子)の処遇について村重が「殺さない」と判断したその夜その息子の刺殺体が発見されるが牢は密室であった。
ってな始まりで、地下牢に繋がれた官兵衛に村重が助言を求めに行く安楽椅子探偵スタイルなんだけど、ただでさえ米澤小説ファンであることに加えて詳しくはないけど歴史好きだもんで、テンションあがるあがる!。

その密室殺人は謎解きがなされてみれば「いやなんでわざわざそんな小細工をして殺す必要が?」とは思うものの「天の導き」という狂った理論(村重自身が「そんな理屈が通るか」と内心突っ込むぐらいの)が結果的に城内の士気を高め織田に勝利するという結果に繋がるわけで、そこいらへんの『時代小説ならでは感』に震える。

とまあ最初の1篇はそんな感じで始まって、続けていくつかの不可解な事件が続き、その都度村重はなんだかんだ自分に言い訳しつつ官兵衛の元へ通うことになるのですが、ひとつひとつ事件を解決に導いていくなかで時は過ぎてゆき、いくつもの命が失われ、村重は心理的に追い詰められていくのです。

そして明らかになる全ての事件の云わば「黒幕」。それは村重にとってあまりにも残酷な真実であった。

ってもう、この時点で「どっひゃああああああ」と驚いた次の瞬間ずーーーーーーーーん・・・と気持ちが落ち込むわけで、物語としてはここまででも充分びっくりなのに、クライマックスはこのあとでした。

黒田官兵衛の告白からの荒木村重の決断。

序章の「因」に対する終章の「果」がまさに『因果』以外のなにものでもなく、そして読み終えてみると『なぜ荒木村重は謀反を起こしたのか』『なぜ黒田官兵衛を殺さなかったのか』という史実に基づく『謎』に対する米澤さん流の『解』に頷くしかなくて、いやあ・・・・・・やべえな!!(二回目)。