櫛木 理宇『残酷依存症』

女の犯罪者がこの表現はどうかとは思いますが活躍する作品としていまだ記憶に残っているほど「殺人依存症」のインパクトは強烈で、まんまと逃げおおせたその女・浜真千代が犯罪嗜好を“変える”と決めたところで終わった物語からどう続くのかと怖いもの見たさでワクワクしながら読み始めたんだけど、復讐コーディネーターみたいなポジションに収まっててガッカリ・・・。

無残な状態で遺棄された女子大生の死体が発見され、一方で大学のサークル合宿の下見をしてる男子学生が襲われ目を覚ますと風呂場で拘束されているところから物語が始まり、女子大生の事件を捜査する警察の視点と、囚われている学生が現在進行形で拷問を受ける視点が並行して描かれるのですが、もうひとつ時折間に挟まれる「何者かの視点」があって、やがてそれらが1つになることで何が行われているのかが見えてくるというスタイルは前作同様なんだけど、そこに「浜真千代」らしき姿はなく、クライマックスでようやく真千代がこの物語にどう関わっているのかが明かされるわけなんですが、それが最初に書いたように復讐の機会を整えるというポジションなんですよね。

この復讐譚において真千代の手がどこまで関与しているのかが解らず、それがガッカリの理由です。鬼畜学生たちに復讐したい者たちがいて、その者たちに繋がりを持たせたことは描かれるけど、そこから先復讐者たちの背中をどう押したのか、見事に復讐を完遂できたのは真千代という存在が介入していたからだとしても、これほど残酷な復讐を行ったのは復讐者たち自身の意志なのか、それがわからないから前作と比べると物足りない気がしてしまう。
まあこれは復讐者の物語ではなく浜真千代の物語におけるひとつの『通過点』なので、重要なのは真千代がなぜこの復讐に手を貸したのか、この復讐を先導したその理由であって、復讐を実行した者たちは真千代にとってはおまけのようなものなのでしょうからこれでいいとも思うんだけど。

復讐コーディネーターポジションに収まったと書きましたが、今回は真千代にもそれを行う理由があってのことだし、ある程度微調整をしないと長続きはしないと真千代が口にしてもいるんで次はまた手を変えてくるだろうし、警察をやめ今は自動車教習所で教官をやってる浦杉も真千代のことを忘れてないし、次作も楽しみです。