『俺の家の話』第1話

脚本・キャスティング・演出のすべてが盤石の連続ドラマ第1話、という感じであった。

そして長瀬智也という俳優が唯一無二の存在であることを改めて思い知らされた。
あの状況、あの流れで謡曲はすらすらうたえるのに野菜の名前がなんで出ないんだろうと言う父親に「別にいいだろ、あんた八百屋じゃねーんだから」って、あの声音あの言い方で言えるのは長瀬智也だけだと思う。無骨のなかにあるやさしさ、それをこうまで絶妙なバランスでセリフとして効かせられるのは長瀬智也の天賦の才だとわたしは思うよ。
だから、その才能が表舞台から消えてしまうのだとしたら、日本ドラマ界の損失以外のなにものでもない。
だからなんとか考え直してもらえないだろうかと、そう思い続ける初回でした。

能楽の舞台とプロレスのリングを繋げる脚本もうまいわー。伝統芸能が好きなので父親と息子と師匠と跡継ぎの関係性が具体例を挙げて想像できるんで、父親に認めてもらいたい息子が父親とは違う土俵で勝負をすることを選ぶことも、それならば誉めてもらえるのではないかと考えることも、わたしなりに理解することができると思うのだけど、そこで息子が選んだプロレスという世界、それは父親が師匠ではなく父親として接してくれる唯一のものだったから、というのにはなるほど納得!と思いつつも目頭を熱くせずにはいられなかった。
リザード寿(名前が決まる流れが酷過ぎて笑ったw)の写真を待ち受けにしてんのは息子だからだけどブリザード寿というレスラーが好きだからってこともあるんじゃないかな。

そして「能楽」と「プロレス」を繋いだ先に「介護」という『現実』がある。そこにはいろんな感情があるけれど、でも「そういうもの(だから仕方がない)」んだよね。そういうものだというその一言で、この先自分にも待っている未来(の問題)だということもふまえてまるっと納得できてしまう説得力があるのだけれど、寿一の妻子との関係や桐谷健太演じる芸養子の扱い、戸田ちゃんの後妻業問題含め宮藤官九郎がここからどんな物語を描いてくれるのか、楽しみで仕方ない。