- 作者: 知念実希人
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2019/03/14
- メディア: 単行本
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バイク事故のあと自らの左手から双子の兄・海斗の声が聞こえるようになった岳士は、薬物治療によりその“妄想”を治療されそうになり自転車で東京を目指し逃げ出したが、野宿していた多摩川の河川敷で死体を発見し、その容疑者となってしまう。警察に捕まれば殺人犯にされてしまうし、なにより連れ戻され海斗を消されてしまうかもしれないと、二人は自力で真犯人を探そうとする。手がかりは「サファイア」という言葉。そして彩夏という年上の女性と出会い・・・というお話で、「左手から死んだはずの双子の兄貴の声が聞こえる」というトンデモ設定を受け入れられるか否かが勝負です。なんの勝負かわかんないけど。
主人公が起こしたバイク事故には背景があって、そこには双子の兄に対する特別な感情があるので「俺の左手には兄貴の魂が宿ってる!」と思い込むのもむべなるかなというか、岳士がドラッグに手を出すようになると当初は左手首から先だけだった海斗の“支配権”とやらがどんどんと広がっていき、やがて海斗と岳士の立場が逆になるなんて展開になるもんだから結局「兄貴はいなかった」という話になるんだと思っていたわけですが、海斗の「真の目的」が岳士に自分の『本体』である左手首を切り落とさせることだったってんでポカーン。え?まじで兄貴の魂宿ってたの・・・?。
そもそも双子で幼馴染の女の子を取り合った(というが岳士がフラれた)ことが発端なのに、その子のことは放置で年上の「お姉さん」に夢中すぎる岳士の性欲の鬼っぷりも描写として不快だし、それがなんかひと夏の青春っぽい感じで終わったことにちょっとびっくり。