誉田 哲也『歌舞伎町ゲノム』

歌舞伎町ゲノム

歌舞伎町ゲノム

ジウシリーズ(歌舞伎町セブンシリーズ)で、上岡が抜けた穴を成り行きというかなし崩しというか、そんな感じで埋めることになった掃除屋シンちゃんを含むセブンのメンバーそれぞれが「起こり」になる短編集です。

過去3作(硝子の太陽は「N」編をカウント)と比べて、セブンメンバーそれぞれの視点で描かれる今作は云わば『歌舞伎町セブンの日常』と言った感じですが、短編であるからこそバイオレンス度はより高いというね(笑)。ボッコボコのボッコボコ祭(笑)。シンちゃんが(本人の意志とは関係なく)メンバーに加入したのはこのためかと(笑)。

それぞれが歌舞伎町で日々を生きる中で、あらゆる形で持ち込まれる「事件」に関わることになるわけですが、始まりは「個人」のものだった話が「歌舞伎町セブン」の仕事になる流れがどれもこれも無理がなく、テンポよくさくさく読み進められて、そしてジンさん視点の最後の1編で上岡の事件に残された“棘”をしっかりと抜くことで完全にケリをつける・・・というトータルとしての流れも見事。しかもこの話の舞台を歌舞伎町ではなく東の移動先である赤坂にしたことで、気持ち的に次作への引きもしっかりあるし、面白かったー!。