- 作者:長岡弘樹
- 発売日: 2020/06/15
- メディア: 単行本
「スクリプター」を務める真野韻が映画製作の現場で起こるトラブルや事件を淡々と解き明かしていく連作短編集です。
タイトルの「つながりません」とは真野韻の口癖であり、あらゆる事情でシーンを前後して撮影する中でシーンとシーンの間に“違い”が生まれてシーンが「繋がらない」ことを意味します。
短編ごとに主人公となる視点が異なり、(真野韻の人物紹介が主であるタイトル作の1篇目を除き)事件を軸としてその前とその後で「つながらない」ところを指摘するだけで、真野韻は常に「スクリプター」として主人公の物語の中に存在しているところが特徴といえばそうなのかな?と思いながら読み進めていたら、ラス前でその様相が変わる。流れであり雰囲気としてはそこまで大きく変わるわけではないものの真野韻の立ち位置がそれまでとはちょっと異なり(それを匂わせ)、そしてラストで一気に「そういうことだったのか!」となるのですが、それはまるでオセロの盤が白から黒へ一気に変わるかのようでした。「つながりません」のキレ味の鮮やかさよ。なんの気なしに読んでいた作中の会話とか説明描写にそういう仕掛けがあっただなんて、全然気づきませんでした。
少し前に読んだ作品もそうだったのですが、今の長岡さんは視覚とか聴覚といった「五感」を使ったトリックに凝っているのかなぁ?。