福澤 徹三『群青の魚』

群青の魚

群青の魚

特養老人ホームで続けざまに入居者が不審死を遂げる事件と半グレ集団の内輪揉めと思われる未解決の殺人事件。両者の背後にある闇に野心はあるが日々の激務に追われる新米刑事と元不良の新米ハコ番巡査が迫る・・・的な物語で、ホームで介護士として働くシングルマザーをヒロインとする相関図は悪くないものの、それぞれを結ぶ矢印が弱い。特に刑事と巡査の間。二人はそれぞれ別の案件、思惑でもって動いているものが終盤になって一気に一つになるところが読みどころであることはわかるんだけど、「顔見知り」程度の関係でしかないのはもったいなさ過ぎる。所属を超えたバディになって欲しいとかじゃないんだけど、もうちょっと物理的な接点でなくとも心理的な交差点があればW主人公として真相解明に至る過程も楽しめただろうに。